番外 ご近所古書店史
 古書組合の機関紙部としての作業で、過去の古書店名簿を調べる機会があった。なにかと気になっていた、雑司が谷周辺にあった古書店の歴史を垣間見る、いい機会だった。ただそこに「在った」訳もなく、千差万別想像遥かに及ばない事情の連続に違いない。それでも、本屋があった、という事実に、ほのかな勇気をもらうことができる。

*()内数字は続けて掲載されていることを意味する。例えば(13)は「昭和13年の名簿にも掲載されている」ということ。
*全年度の名簿ではない。別件で必要になった年度のもののみ。

昭和13年<1938> 全国書籍業組合員名簿(「古書籍業」に限らない)
・雑司ヶ谷3-50    石井隆文堂
・高田本町2-1511  高文堂
・雑司ヶ谷4-665   素山堂書店
・目白町2-1616    清文堂
・目白町2-1556    高志堂
・雑司ヶ谷町7-1001 丸美堂書店
・雑司ヶ谷町1-1119 マツウラ書店
・目白町2-1721  目白書房
・目白町2-1700  ミツル商会
・高田南町1-398  文廣堂
・高田本町1-327  林書店・宇宙堂
・雑司ヶ谷4-635  フクヤ
・雑司ヶ谷町4-630  牧野文明堂
・日出町1-116  越山堂
・雑司ヶ谷町149  渡邊商店

昭和16年<1941> 東京古書籍商組合員名簿
・雑司ヶ谷町32  勉強堂
・雑司ヶ谷町52  香山堂
・雑司ヶ谷町3-516 喜文堂
・高田南町1-156  岩田書店
・高田南町1-361  三星堂
・雑司ヶ谷町5-701 川島書店
・高田本町2-50  小林兄弟商店
・雑司ヶ谷町446  店名無し
・雑司ヶ谷町5-712 店名無し
・目白町2-1705  店名無し
・雑司ヶ谷町3-37  天橋堂書店
・目白町2-1721  目白書房 (13)
・高田本町1-327  宇宙堂 (13)
・目白町2-1720  武蔵堂書店
・日出町1-162  松崎書店

昭和30年<1955> 東京都古書籍商業共同組合組合員名簿
・雑司ヶ谷町32  木下勉強堂 (16・勉強堂?)
・雑司ヶ谷町5-701 川島書店 (16)
・高田本町1-8  井上書店
・雑司ヶ谷町3-57  高田書店
・日ノ出町3-10  藁火書房

昭和45年<1970> 全国古書籍商組合連合会会員名簿
(番地略)
・南池袋1  店名無し (川島書店と店主名同じ)(16・30)
・南池袋1  藁火書房 (30)
・南池袋1  盛明堂書店
・高田本町2 井上書店 (30)
・雑司ヶ谷1  神楽坂書店
・雑司ヶ谷3  高田書店 (30)

昭和57年<1982> 全国古書籍商組合連合会会員名簿
(番地略)
・南池袋1  藁火書房 (30・45)
・南池袋1  盛明堂書店 (45)
・高田2  井上書店 (30・45)
・雑司ヶ谷2 神楽坂書店 (45)
・雑司ヶ谷3 高田書店 (30・45)

昭和62年<1987> 全国古書籍商組合連合会会員名簿
(番地略)
・高田2  井上書店 (30・45・57)
・雑司谷3 高田書店 (30・45・57)
・南池袋2 観覧舎

平成3年<1991> 全連会員名簿
(番地略)
・東池袋2 宮田書店
・南池袋2 観覧舎
・雑司谷3 高田書店(30・45・57・62)
・高田2  井上書店(30・45・57・62)

平成12年<2000> 全連会員名簿
(番地略)
・東池袋1 光芳書店

■本店所在地で登録されるとすれば、支店が雑司が谷周辺にあったとしても名簿の「北部」欄にはない。また、組合に加盟していない(名簿にない)お店もあった可能性がある。

■昭和44年に町名が変更(その後にも細かいことがあったようだ)、現在の住所表示に。例えば「雑司が谷4~7丁目」は無くなり「東池袋」、「目白」、 「南池袋」、「文京区音羽」に編入。

番外 ご近所古書店史_f0035084_23194872.jpg■木下勉強堂さんが閉店なさったのは平成3(1991)年とのこと(ご親族の方にお聞きした)。不忍通りが目白通りとぶつかり終わる交差点の近く不忍通り沿い。昭和30年より先の名簿にお名前がないのは、上記住所変更により、文京支部に編入されたためと思われる。戦前(昭和16年)の名簿にある「勉強堂」が木下勉強堂さんの前身であるとすれば、50年以上続いたことになる。画像は木下勉強堂さん宛、本間久雄による古書展(ぐろりや会)注文状。


番外 ご近所古書店史_f0035084_23212173.jpg■藁火書房さんは現在のグリーン大通り沿い大和證券のあたりにあった(旧日ノ出町)。その後移転、ビックリガード沿い、駅東口側に(店舗営業であったかは不明)。井伏鱒二著作の限定版の版元でもあったらしい(ご親族の方にお聞きした)。


番外 ご近所古書店史_f0035084_23242697.jpg■池袋駅の目の前にあった盛明堂書店さんのことは折々ご年配のお客様から聞くことがある。


■高田書店さんは鬼子母神参道ケヤキ並木と商店街の二股分岐点角地。
 『東京人 特集[東京くぼみ町コレクション]』(1991/3)で池内紀は
< 都電の鬼子母神駅で降りると、参道に向かって商店が並んでいる。右手に金物屋、八百屋、雑貨屋、豆屋、花屋。欅並木の参道は、太い幹から枝分かれしたように二手にわかれ、分岐点に高田書店という古本屋があった。>
< 二十代のはじめ、参道入口の花屋の南を右に入った露地奥のアパートに4年あまり住んでいた。>
 と書いている。

■井上書店さんは現在の明治通りと目白通りの交差する千登世橋すぐ近く。熱々上海食堂の並び。

■神楽坂書店さんは、現在の旅猫雑貨店さん前を護国寺方面に進み右側路地奥。

■井上書店さん、藁火書房さん、高田書店さんは少なくとも30年近くかそれ以上、名簿に載り続けていることがわかる。
by ouraiza | 2002-01-01 00:00 | メモ/雑司が谷の本 | Comments(4)
Commented at 2009-03-26 10:57
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by かわじもとたか at 2021-09-02 13:36
藁火書房さんはバイオリストの巖本真理の実兄との話があるんですが、名簿に名前は見なかったですか(巖本姓)?
Commented by ouraiza at 2021-09-03 15:46
ええー!そうなのですか、、、!しかし申し訳ありません、この記事を書いたのが19年前でして、当時参照した名簿が今手の届くところに見当たらず、多分どこかにはあるはずなのですが、確認できません、、、、。コメントありがとうございます。もしいつか確認できましたらお知らせいたします。
Commented at 2021-09-04 09:40
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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