全身古本屋
全身古本屋_f0035084_0313911.jpg気温が低くて終日涼しく、久しぶりにお客様が少し戻った気がします。あれだけ嫌だった暑さも、去ってしまいそうになるとあわてるというか、うわ、秋はもうちょっと待って欲しい・・・と急に名残惜しくなります。今年の夏はまだ何もしてない・・・・。

ビデオ鑑賞 原一男「全身小説家」(1994)

撮影対象となった井上光晴の半生も作品も全然知らないまま見てみることに。
前半は主に井上のやっていた小説教室(文学伝習所)での彼の活発な活動や、その生徒さん(主に女性)たちから熱烈に好かれている証言が続く。埴谷雄高とかも出てきておぉ、と思う。とにかく私にはよく分らないがすごくもてる人やのう・・・と半ば感心し半ば引きながら、面白いけれどもビデオパッケージにあった「虚と実」の宣伝文句はなんだろう・・・とぼんやり考えていると、中盤も過ぎたあたりで、これまで画面にも出てきた井上の自己申告の年譜がかなり間違っていたことが分る。そこから作品がすごいのは、彼の妹や親戚まで訪ねていき、どこがどのように嘘だったかを克明に暴いてしまうところだ。撮影の途中で井上はガンにかかり、闘病の末最後に亡くなってしまうんだけれど、死後この映画が完成して遺族は何も文句は言わなかったのだろうか・・・。
撮影期間が5年と長いため、季節がめぐる様子が描かれ独特の効果を出している。特にお正月になると井上宅にお弟子さんたちが集って年始の挨拶と飲み食いをする、その毎年の風景が、見ているこちら側までだんだん懐かしい気持ちになり、また家の調度品などは変わらない中、彼の病状が悪化して痩せていく様子も目の当たりして、映像ってすごいなぁ・・・と思いました。
自分を支持する人に囲まれて、死ぬまで持論を大声で展開していた幸せそうなおじさん、という意地悪い見方もしつつ、でもなんだかこの映画を見る前よりずっと親しみやすくなった、そんな印象を井上光晴に持ちました。
それから、長い時間画面に映っており、誰かと会話をする場面も多いながら、一度もカメラの前で証言をすることはなかった井上夫人が私はとても興味深かった。夫が病気になっても一種ひょうひょうとした顔で、しかししっかり看病をし、家の秩序も保っている。長女井上荒野さんの『ひどい感じ―父・井上光晴』でも読んでみたくなりました。
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写真は一月近く前の川越まつりの様子。いろんな企業みこしが出ていたのが面白かったです。巨大なでんこちゃんを乗せた東京電力みこしとか。
ここに映っているのは(見にくいですが)埼玉県民には有名な「丸広デパート」みこし。ローカルっぷりに感動しました。

久世番子さんの『配達あかずきん』を読み返してたら、作中、男性店員が抱える本の中に、内澤旬子さんの『世界屠畜紀行』の背表紙を見つける。芸が細かすぎてすごい。


なつき
by ouraiza | 2008-08-19 00:41 | ふらふら散歩(終了) | Comments(1)
Commented by 多郎左衛門 at 2008-09-03 01:42 x
かなり、カメなコメントですが…。
「川越まつり」は10月に行われる祭りなので、
きっと「川越百万灯夏まつり」のことですよね。
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