非現実の王国
非現実の王国_f0035084_23553927.jpgモノゴトから逃げているときに限って映画館に行きたくなる性分でして、先日もまた映画鑑賞してきました。
「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」(渋谷 ライズX)
誰に見せることなく数十年間、自室で独特の絵と小説を書き続け、死後それが発見され大評判になったヘンリー・ダーガー、その彼の半生を追ったドキュメンタリーです。数少ない周囲の証言と彼自身の記録、そして残された膨大な長さの物語からアニメーションと実写をつむぎます。

本作ではじめて知ったのは、彼のことを記憶している人はとても少ないため、Dargerという名前すら読みが「ダーガー説」と「ダージャー説」に別れていてはっきりしないこと。これにはびっくり。「名前」というのはそれを呼ぶ他者があって初めてちゃんと機能するんだということをまざまざと感じました。
それからダーガーが最後に暮らしたアパートの大家で、会話を交わした貴重な隣人であり、彼の作品を見出すことになったラーナー夫妻のキヨコ夫人がたぶん日本人であることも、なんだか親近感がわきました。とても冷静にかつ明晰に、ダーガーの人となりやエピソードを語っていて素敵でした。特に夫妻の飼い犬ユキを彼も可愛がっていたという話は印象的です。

画面に現われる沢山のダーガーの絵は、どれも鮮やかで何より色使いがとにかく素晴らしくずっと目を奪われっぱなしでした。これを独学で習得したというのが信じられなかったです。画集欲しい!
周りとは交流をほとんど持たず、自分で作り上げた秩序の中で生涯を生きたダーガー。でもよく言われるような「引きこもり」ではなくって、老いてやめさせられるまでずっと掃除夫の仕事をし続けていたわけだし、誰に迷惑もかけていない。こういう生き方も、ありだなぁ・・と考えさせられる映画でした。ただ相当の覚悟とエネルギーは必要だと思います。

映画のあと、せっかくたまの渋谷に来たので、わりと最近出来たと小耳にはさんだシブヤパブリッシングという本屋に行くことに。地理にうといため物凄く迷いましたが、本当は駅からまっすぐ行けるはずです。(神山町)。
非現実の王国_f0035084_0331770.jpg汗だくで着くとそこには商店街の一角に光る空間が。一面窓ガラスで中が見えて、とても目立っていました。
お店は、選び抜かれた新刊と少しの古書が、「1950」「1960」~と時代ごとに分けられた棚に並べられています。室内の半分から向こうは透明なガラスで区切られ、出版業務の事務所になっているみたいです。白い棚、明るい照明、ガラスばり、ピカピカツルツルの本たち・・・・うわわーオシャレ。
たぶん場所柄、来るお客さんたちのニーズにはばっちりなんでしょうが、庶民派の私にはちょっと合いませんでした(トホホ)。同じく本のセレクトショップでも、春に行った恵文社(京都)は、見るもの全て欲しい!という気分になったのですが。うーん謎です・・・。

うう、今恵文社のサイトを見て知ったのですが、「ユリイカ」の「臨時増刊 矢川澄子特集」(2002)がいつのまにか再版されてる・・・。昔、品切れ後ずーっと探し続けて入手したことのある自分としては、複雑です。とてもとても良い本なので結局は嬉しいですが。同じく矢川さんの『わたしのメルヘン散歩』(ちくま文庫)が復刊された時以来のショックです。

なつき
by ouraiza | 2008-08-05 00:56 | ふらふら散歩(終了) | Comments(0)
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