清と精    せと
12月1日月曜日。
 内勤を休んで寝る。午後遅めから少しだけ諸事。受注物の発送などなど。封鎖している店奥に積んでいる大山脈の一部が崩れそうなので積み直し。
 
 夜、遠方の頑張っている同業の友人といわゆるZOOM飲み会をする。こんなことができるなんて、インターネットというのはすごいものだ。もしインターネットの通信電波が目に視えたとしたら世界は何色だろう。多分、空気の成分は酸素と窒素とワイファイ、に違いない。

12月2日火曜日。
 休み。
 映画を観る。「麻雀放浪記」(1984 和田誠監督)、「昭和残侠伝」(1965 佐伯清監督)、「醜聞 (スキャンダル)」(1950 黒澤明監督)。3作とも戦後の焼け跡の気配が色濃く、映画が映す時流の背景がとても面白い。ギャンブラー、やくざ、画家、弁護士の復興。
 夜、「いのちぼうにふろう」(1971 小林正樹監督)を観る。仲代達矢さんのなんたるかっこよさ。人を斬り小鳥を護る。

 買い物をしに出て、東池袋のタワーマンション建設工事現場の横を通りかかると、ヘルメットの影が店に整列している静かなシーンがあった。
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12月3日水曜日。
 休み。午後出かける前に「アパートの鍵貸します」(1960 ビリー・ワイルダー監督)を観る。これがあのテニスラケットパスタすくいか!と思った。
 神保町の文房堂さんに額縁を誂えにいく友人Kさんとムトさんについていき、B4判のポスターフレームを買う。さんま好きのKさんと行きたいと機を待っていた飯田橋の居酒屋秋刀魚さんへ。さんまの塩焼きはメニューになく、お店のかたにお尋ねすると、もう時期が遅くて小さいのしか入らないからとのことだったが、それでもいいのでとメニュー外のお願いをして今年最後のさんまの塩焼きをいただいた。
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 神楽坂を歩いて以前から気になっていたビリヤードStellaさんで少し遊ぶ。ムトさんと柘榴杯。こういうお店が近所にあったらいいのになあ、と思う。

 夜、映画「悪い奴ほどよく眠る」(1960 黒澤明監督)を観た。

12月4日木曜日。
 前業後に開店して諸事。
 梶芽衣子さんの『女囚さそり 第41雑居房』のパンフレットを昨日買ったフレームに入れて飾る。かっこいい。
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 大山脈で店奥を封鎖したまま年を越してしまいそうなのがイヤで、普段は場ががちゃがちゃと乱れるのでやらないようにしている営業中の山脈の仕分けを番台横でやることにする。台車2台分程度を切り分けたところで縛り、次の2台に移ることを繰り返す。

 今日は「江分利満氏の優雅な生活」を観るのだ、と言ってしばらく後に、ムトさんが「おい、今日は佐分利信を観るんだろ?」と言うので、「エブリだよ!」と応じる。「ブリが一緒じゃねーか!」とのことで可笑しい。

 氏名を訊ねられた時、苗字と名前のうち名前を1回先に言うといい感じ、という説を聞いた。例えば「お名前は?」「太郎‥‥山田太郎。」のようなこと。機会があったらやってみたい。

 映画「江分利満氏の優雅な生活」(岡本喜八監督)を観た。

12月5日金曜日。
 前業から開店して諸事をはさんで店内奥を封鎖している山脈の仕分けをずっと。

 夕方、入口ドアと店内の2箇所に掲示している「屋外の商品は先にご清算ください」という貼り紙を指して、「あの‥‥何度か来店してずっと気になっていることがあって‥‥余計なお世話だったらまことに申し訳ないんですが‥‥」と男性のお客様がお会計をしながら話しかけてくださった。内容をお聞きしてとても驚いた。お客様は宙に指で文字を書きながら、「あの貼り紙に『清算』とあるのは『精算』なんじゃないでしょうか‥‥もしなにかこだわりがあるのならすみませんが‥‥」とご丁寧に仰る。なんたることだろう、ぼくは「清算」と「精算」が微細な違いはあるかもしれないが大きな枠内ではお会計の意味に使える終局的には同じもの、だと思い込んでいたのだ。「十分」と「充分」のように、差は手癖くらいのものだろうと。
 講談社学術文庫『国語辞典』より抜粋。
清算/財産を整理、処分すること。過去の関係を全部捨てさること。
精算/こまかに計算し直すこと。

 夜、映画「ジャッカルの日」(1973 フレッド・ジンネマン監督)を観た。今日と言う日の打ち上げでの飲酒による酔い、ストーリー展開の速さ、フランスとアルジェリアの歴史的関係への無知によって脳が追いつかず、半分も進まずに眠りの底へ沈没していた。

12月6日土曜日。
 前業から開店して諸事を挟んでずっと店内奥を封鎖している山脈の仕分け。四六判が終わった。多い順に、政治、歴史、中国関連、帝王学、宗教、など。

 夕方ふと空いた時間に「屋外の商品は先にご[清算]ください」看板を[精算]に作り直して貼り替える。

 夜、ムトさんに連れられ新宿のライブハウスでムトさんが応援中のっぺらさんのライブを観る。鳴れ鳴れもっと鳴っていろいろつんざけー、という想いが湧いて涙がでてきた。各種貼り紙を見ると、ライブハウスは往来座と同じ年に開業なさっているようだった。しきりに「俺薄着なんすよー、失敗したなー」と照れくさそうに繰り返す男性と「そうすねー、厚手の上着あったらいいすねー」などと言いながら喫煙所でたばこを吸った。とても楽しかった。

12月7日日曜日
 短い前業。開店して諸事。
 店奥に積んでいる山脈の仕分け、A5判をよいしょよいしょと進めて終わらせる。
 
 閉店後の番台端会議にて、なぜか不思議と日々の隙間に忍び寄ってきてそれなりに盛り上がり楽しいけど不毛な話題の筆頭、「宝くじで10億円当たったらどうする」会議が始まる。今回の反対意見が最少の一応の落着点は、「どこかの町に横丁を作る」だった。
 映画「ジャッカルの日」の背景になっているフランスとアルジェリアの関係について調べたり話したりしていたら、ムトさんが「ん?アルジェリアだっけ?ナイジェリアじゃねーか?」と言う。なるほど、ジェリアが有るのか無いのか。


by ouraiza | 2025-12-08 01:57 | Comments(0)
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