綿    せと
10月13日月曜日。
 雑司ヶ谷霊園の横で電動アシスト付き自転車を借りて市場へ入札に行く。依頼を受けているジャンルを少しでも買いたいのだが何が出品されているのかは水物で、今日も見当たらず。とりあえずお茶を濁せるかもしれない大山に気張って入札した。
 色紙額を探しに神保町の文房堂さんへ。シンプルで安直ではない色紙額はいつ探してもなかなかみつからないものだったのだが、文房堂さんの色紙額が素晴らしかった。
 午後遅めから営業はせず内勤。各所にメール連絡など『名画座手帳2026』に関するやらねばならぬ細かなことがたくさんありところどころサボったりサボらなかったり。

 夜、東池袋の居酒屋サン浜名さんの2階に行くと想定外のさんまがあったので2匹いただく。今年はもう打ち止めかと思っていたので嬉しい。
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10月14日火曜日。
 休みだが『名画座手帳2026』が納品される日なので内勤。午後、例年の運送屋さんではない赤帽さんが手帳を運んできてくださった。ドジャース対ブリュワーズを観ていたら別便の帯も届いた。
 商品化軍による作業場所を作るために店奥を封鎖するなど細かな準備をいろいろ。

 ここ2年は売り切れている『名画座手帳』だが、売り切れの波にいたる当初には発行部数を減らしてみたことがあった。そんなことを話していたら編集部Iさんが至言をつぶやかれた。「ジャンプするためには一度しゃがまねばならない」。

 販売サイト「日本の古本屋」が補強のためのメンテナンスを終日実施し、ついに再始動。しかしほんの少し不具合を生じてしまったと注意喚起のメールをいただいた。その内容がなんだかとても可笑しくて和んだ。システム内の一部で発注いただいたお客様のご住所が全てなぜか「北海道」になる、とのこと。もちろんすぐに修正されたが大胆で愉しかった。あらゆる住所が北海道になるなんて幻想的だ。

10月15日水曜日。
 出勤して店裏のラーメン浮浪雲さんで昼食。
 封鎖した店内奥での『名画座手帳2026』の商品化作業に集中したいのだが、お車での大きめのお持ち込みが2件ほど続き査定と仕分けに追われることになった。
 
 手帳販売の準備を進めるが、小さく細かな作業が年々重くなっていることを感じる。小石を15cm横にずらせばいいだけなのに、両手でやっと持ち上がるサイズの石を5cmだけ横に押している、ような感覚。そうか、なにか引っかかりがあって摩擦を起こしているのかもしれない。無意識下の摩擦、そして摩耗。

 奥作業場では例年通り有志が集って手帳の梱包作業を進めてくださった。ラジオではタイガース対ベイスターズ。

 夕方ふと思い立って東武デパート内の廉価品ショップで買ってきた猫用小部屋を置き、ぜんぜん入ろうとしない玉と梅をむりやり押し込んだ。
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10月16日木曜日。
 前業からずっと手帳発売の準備。主にオンラインストアでご予約くださったお客様への送り状印刷と梱包。開店して諸事。

 午後、新人のぼくにとっては噂しか聞いたことのない大ベテランである伝説のK書店さんから古書組合脱退希望のお電話があり驚く。おつかれさまでした、とお伝えした。お声を聞けただけでも支部長の役得だろう。これからもっと、お仕事を引退なさる古書業者さんが増えていくのだろう。

 何度かご来店いただいていた、中国語訛りのおぼつかない日本語の大音声でたくさんお話になる70代後半かと思われるおじいさんがアニメキャラクターの茶碗を万引き。おふくろは占い師で占いの本も出したんだよ、と仰っていたっけ。ご本人はコックさんだった。店前のバス停に座って盗んだ茶碗から値札を剥がしていたので「それ返してよ」と言う。「これオレのだよ」と主張するので「だって今うちの値札剥がしてたじゃない、その手の中見せてよ」と問うと、「無いよ、無いよ、そんなの無いよ」と小さな声で仰る。問い詰めるのはもう嫌だった。「悲しいです。悲しいですよ。」とだけお伝えして茶碗は贈ることにして店内に戻った。問い詰めるのはもう嫌だった。

 深夜、「どんぶらこ」と「てんぷらこ」は似ている!と気付いた。

10月17日金曜日。
 前業からずっと手帳の準備。オンラインストアで予約してくださったお客様と販売してくださるお店に発送するのは郵便局が稼働している金曜日のうちのほうがいい、ということで連綿と梱包作業。
 うちの愛車8号を仕事で使う予定の立石書店一郎さんに運転してもらって郵便局へ行き『名画座手帳』の一部を発送。その足で隣町の多岐祐介先生のお宅へ伺い大学学園祭のための依頼品の納品と先生のご蔵書を買い取りのためお預かりする。

 夜、用事を終えて戻った一郎さんに運転してもらい豊島郵便局本局で『名画座手帳』をさらに発送。そんな時間制限があるとは知らず、翌日配達便には15分ほど間に合わず。店に戻って自転車で新文芸坐さんに納品。

 閉店時間近くから『名画座手帳2026』の最終的な売り場の準備をする。例年通り棚の裏に仕舞っていた幟を取り出して入り口横に垂らす、など。
 準備の一応の完了を祝ってなんとか乾杯したいと数件巡ったが週末のためか満席による席無しが続き、焼きとんだいだらさんに到った。

10月18日土曜日。
 『名画座手帳』の発売日だが、前業から商品化がぎりぎり終わった大量な文庫を配架しようということになり大わらわとなる。完全には終わらず営業中の課題とする。
 13時に『名画座手帳2026』を発売開始。帯を書いてくださった梶芽衣子さんと山口馬木也さんの人気の激しさですぐに店頭が温まる。額に入れて飾っている直筆原稿の写真を撮られるお客さまがとても多い。

 午後、若き芸術家ジャッキーさんが作成なさった『東京映画館案内 都内の名画座・ミニシアター・シネマテーク…行ってみた』というナイスな冊子を納品のために持ってきてくださった。看板を書いて、と頼むと、字は恥ずかしいからヤダ!ということでJ・L・ゴダールの肖像をスマホ画面をトレースして描いてくださった。
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 夕方から、屋外では年に一度の盛大なお祭り、お会式の万灯行列が賑やか。落ち着いて静かに番台にいたい願いが、その場その時限りの乱痴気騒ぎに邪魔され、早く店を閉めたくてしょうがなくなった。

 アメリカではドジャース大谷翔平選手が投手として10奪三振、打者として3本塁打。

10月19日日曜日。
 前業にて諸事。開店してまた諸事。曇り予報だったが時折小雨が舞い落ちてくるので屋外はカタツムリシフトを敷く。

 久しぶりにじっくりした営業の時間が流れて嬉しい。
 ご常連のOBさんからそのご子息、通称「綿之介」くん生誕時の出産ドラマをOBさんの迫真の熱弁でお聞きした。とても楽しい。日本映画好きのOBさんに育てられた綿之介くんは、小学生のころ、学校で好きな人をアンケートされた際、その欄に「中村【錦:きん】之助」と書いたつもりが持ち帰られた用紙を母のOBさんがチェックしたところ「中村【綿:めん】之介」と書いてあったのだそうだ。「綿之介!なんか優しそうで弱そ〜」とOBさん。そんなエピソードから「綿之介」は当店内で有名である。ついに来春、就職のため親元を離れ地方に行くことになったとのこと。

by ouraiza | 2025-10-20 19:02 | Comments(0)
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