1億回の1劫が背にあれば    せと
9月29日月曜日。
 早朝に起き、店で番台前に干しておいた昨日使った黒いスーツとワイシャツに再び着替えて革靴を履き、ラッシュの電車に乗るのが無性にイヤだったので池袋西口からタクシーに乗り山手通りを20分ほど北上、戸田斎場へ。T書店さんの告別式の受け付けお手伝いを少しする。とても天気のいい日で、式場の入り口横で屋外に面した受け付けの机から見える荒川の土手がきらきらしていた。
 受け付け業務だけで失礼させていただき、都営三田線で神保町。頼まれものを探すために市場に行き6点ほどに入札。
 店に戻って浮浪雲さんでラーメンを食べ、遊んで放心したくなり短時間のビリヤードの練習へ。根を深く張りつつも脱力した「柳の型」を目指しているのに、枝が硬くなっているという重大事に気付いた。腕を解放せよ。

 店で少しだけウェブ発注対応などの内勤。市場の入札結果をチェックすると全敗していて驚く。知見不足によるなんたる弱さ。経験不足によるなんたる劣化。予算のある入札なので半端な気合いではあり、そういうときにもたいていなにかが引っかかりはすると思っていたのだが、連続三振。いやしかしまだ7回の裏。
 最新版『名画座かんぺ』の表紙作り。疲れで新しく版画をする気になれず、過去作ファイルから11年前の版画を発見。使うことにする。『名画座手帳2026』の発売予告を表紙に入れる。

9月30日火曜日。
 休み。
 開業直後から約20年、売れないのに売っているのが愉しいな、と天井が高いことを利用して隙間にはめこんで飾っていた百科事典がウェブ通販で売れてしまった。淋しいが、しかし仕入れはしないだろう。
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 午後出勤してウェブ発注の対応など諸事。

 夕方から大森あんず文庫さんにてムトさんが龜鳴屋勝井さんやSZさんと打ち合わせをなさるのに付いていく。気配が秋めきジャーマン通りから高々と空にかぶさる雲が見えた。ある世代のかたがたのお名前に「洲」の漢字が入っている場合、満洲のからの着想であることを教わる。歴史の深淵をまとう美しい文字だと思う。
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 帰路店に寄って午後の諸事の続きを少し。

10月1日水曜日。
 休み。
 夕方から第28回YBA(山田ビリヤードアカデミー)。枝(腕)を解放しようと務めて粘り、9-9の引き分け。最終戦を終えて同点だった場合勝負を決する延長戦をする、というアカデミー発足当初の要項があったのだが、二人とも缶ビール過飲と長時間集中による消耗が激しく引き分けで終えることにする。通算獲得ラック数162-245。総合成績3勝24敗1分。毎回プレイ料金を賭けているのだが、引き分けだったので折半になった。
 居酒屋大門さんにて反省会。山田くんが「上戸彩って知ってる?すげぇキレイな人なんだよ」と言っていて驚き、可笑しい。

10月2日木曜日。
 起床後、家のワイファイがまったく不通になっていることに気付いた。コンセントを抜き差ししてみるがまったく不動。モデムなのかルーターなのかわからない二つの器械が灯すランプの状態も不動。根が深そうな気がして暗澹とする。ひとまず、壁の隙間から忍び込んできた妖精が修理してくれるのを待つことにする。

 前業でごちゃごちゃした資料の整理など。開店して諸事。
 お客様からいただいた梅昆布茶がとても美味しい。

 夜、80歳代と思われるご婦人が、歌の本を探してるのよぉといらっしゃった。近隣の集いでのカラオケ会でしっかり歌って褒められたいので日々練習するための本を、とのこと。歌と申されましてもどんな歌でしょう‥‥と尋ねると、「あのほら、古い時計が壊れたとかどうのこのいうやつ‥‥」とのお応えだったので試みに「おーおーきなノッポのふるどけい おじいーさんのーとけいー」と歌ってみるとまさにそれだ!ということで、ちょうど在庫していた童謡楽譜集をながめながらしばらく一緒に歌う。すると、「もう1曲、あたし好きなんだけど歌えるようになりたいのよ、あのほら、イタリアのやくざがドンパチするやつ‥‥」と追加リクエストがきた。帳場端飲酒会議中だった面々でしばしかんがえをめぐらし、誰かがまさか、とゴッドファーザーのテーマを口ずさむと、それそれ!とのこと。つまるところ、尾崎紀世彦さんが日本語詞で歌う「ゴッドファーザー 愛のテーマ」だったのである。YouTubeで映像を流しながらまた一緒に歌う。童謡集をご購入くださったご婦人は、また歌いましょうね〜と帰っていかれた。
 
 テレビでYouTubeが観れないのでビリヤードの国際大会も観られない。もやもやも多少はするが、ではインターネットがなければ何をするか、とゆったり読書をして早めに眠る。以前はずっとそうだったのに、それが新鮮なことになってしまった。

10月3日金曜日。
 眠っている間にワイファイ修理の妖精は来てくれなかった。
 前業でなにもせず虚空を眺める。開店して諸事。
 久しぶりに雑司が谷と店のことについての雑誌の取材。ここ数年は『名画座かんぺ』の取材が多かったのでめずらしい。もともと特徴がほとんどない店なのでなんとかごまかそうとべらべらとご機嫌で話す。うっかり『名画座手帳2026』の宣伝を入れてもらうことを依頼し忘れ忸怩。

 課題だった手帳のオンラインストアページを作った。

10月4日土曜日。
 前業で一部の棚の配置転換。『名画座手帳2026』が入荷した時に困らぬよう手をうっておく。開店して諸事。

 課題だった手帳の新版ホームページを作る。まだ公開していない情報をどこまで入れるか毎年按配に困る。

 こんなことができるのか!と慄きつつ家のインターネット回線を店のインターネットから診断。とりあえず、壊れている可能性のある配線、モデム、ルーターのうちのモデムを新しいものに交換してみようと、NTTに申請をした。

 手帳編集部Iさんに貸していただいた『吼えろペン RRR』(島本和彦著 小学館)がとても面白い。ドラマ「アオイホノオ」を観て以降、島本和彦さんという漫画家をしり、とても好きになっている。

10月5日日曜日。
 前業で古書組合に関する事務や『名画座手帳2026』についての資料作り。開店して諸事。
 午後、極ご近所様の買い取り下見へ行く。さてどうするか悩む。

 やることリストを作って業務を進めたのだが、例えば「コーヒーを買いに行く」や「セロテープを貼り替える」、「予約の電話をする」などの極々小さな簡単な事項もリストに入れておくと、さっさとその一つを終わらせてリストの項目にいかにも重大な目標に達成したかのようにビシッと赤マジックで「済」マークを入れると不思議と他の事項もリズムに乗って行いやすいことがわかった。

 須田剋太展のチラシを拡大してポスター状にした額を番台後ろに移動。億劫。軽検索によると、100年に1度岩山に降りてきた天女が羽衣で岩を撫でてその摩擦で山が無くなるのにかかる時間が1劫。その1億倍の長さが億劫。「劫(こう)」は仏教的時間のなかで最も大きな単位で、その逆が「刹那」とのこと。
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 尾崎一雄『もぐら横丁』(1952 池田書店)がとても面白かった。もぐら、なめくじ、ぼうふらの横丁三部作。檀一雄、林芙美子、近所の人々、と著者と並走する裏主人公が入れ替わりつつ、圧倒的に易しくユーモアを交えた文体で綴られた自伝随筆。「雑司ヶ谷」の記述が2箇所。まとめたい。
 山本周五郎の短編集『日日平安』を少しずつ読み始めた。にちにちへいあんか、ひびへいあんか。

by ouraiza | 2025-10-06 19:27 | Comments(0)
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