石と景色    せと
 イグノーベル賞がとても面白い。牛をシマウマ風に塗装することで蜂に刺されづらくなりストレス軽減につながるなんて(シマウシの受賞ニュース記事)。wikipedia「イグノーベル賞受賞者の一覧」は、じっと読んでいるだけで心理的安定剤の効果を得られる気がする。

9月22日月曜日。
 昨日急に思い立ち、岐阜に遊びに行く。岐阜駅前にそびえ立つゴールデンノブ(黄金の織田信長像)に押忍久しぶり、とご挨拶(撮影:ムトさん)
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 古書と古本・徒然舎のツレッチと地域のソウルフード、更科さんという老舗の冷やしたぬきそばを食べる。
 ムトさんが少し絵を展示する予定の徒然舎さんが新しく展開し始めたビル3階の美術書売り場をみせてもらう。「若いころにこんな場所が近くにあったらオイラ毎日来て美術書眺め続けて店員さんに煙たがれるな」とムトさんが言うように、とっても居心地がよく清々しい面白い場所。ちょうどいいところに来た、ということでブラインドを4つ設置する。これが驚きのブラインドで、最下部を手で持って軽く持ち上げてちょうどいい場所で離せばそこで止まり、降ろすのもただすっと引っ張るだけ。「ハニカム構造である」とツレッチが何度も言っていた。
 繁華街の大道小道を散歩し、結局数年前とても楽しく食事をした串焼きいろり庵さんに落ち着く。串を並べた浮き輪くらい大きな皿を持って店員さんが各席を回り、その皿から食べたい串を取ってテーブル上の囲炉裏で焼いて食べるといういわゆるローリングサンプルストレートファイヤーシステム。6ローリングほど食べる。
 
9月23日火曜日。
 ホテルの横でレンタル電動自転車を借りて長良川に向けて出発。しかしいつの間にか鶯谷トンネルという長いトンネルに突入して山を挟んだ逆側に抜けていて驚く。後で調べると鶯谷トンネルは646メートルとそんなに長いような気がしないが、自転車で密閉された狭い筒の中を走っていると永遠に続くような気がしてとても面白かった。はからずも岐阜城周辺を遠距離サイクリングする結果となり、山の頂上にピョコンといたずらのように建っている可愛らしい岐阜城の天守閣をいろいろな角度から眺めることができた。
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 長良川の河原にはピンポン球からソフトボールサイズを超えるものまで、磨耗して円形になった石がたくさん落ちていて、持ち帰ることができる大きさでなるべく正円の石を探して候補を3つほど選んだが、表面に赤い線の模様が入っている不思議な石と出会い、店へのお土産はその神秘な石にすることにした。長いほうの直径約13センチ。(画像はその表裏。後日ごしごしたわしで洗ってみたが模様は消えず。クレヨンの落書きではない。)
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 徒然舎の倉庫を見学させてもらいながら遊んだりした後、ゴールデンノブにまたね、と挨拶。帰路につく新幹線の出発まで時間があったので駅中の居酒屋さんでビールを飲んでいるとT書房タケちゃんから電話があり、同業の大先輩が逝去なさったとのことでとても驚き、唖然とした。
 21時過ぎに池袋に戻り、店でしばらくウェブ発注の対応などの諸事をした。
 
9月24日水曜日。
 休み。
 感覚として9月10日ごろなのに実際はもう24日なのだと気付き、まさか、という驚きと、そりゃそうだ、という納得に挟まれて今年もどうせ少ししか吹かないと思われる秋の風を窓から入れた。
 廃テンションで家窟にこもる。ビリヤードの国際試合、ベトナムでのハノイオープンがYouTubeでライブ中継されているのを観ているとベトナム語の実況中継が入り、耳にしたことない片仮名がエモーショナルに語られていてとても面白い。

 夜、岡本喜八監督『独立愚連隊西へ』(1960)を観た。『独立愚連隊』(1959)よりも洗練されているが、洗練の無さも忘れ難い。

9月25日木曜日。
 前業で漠然と店の見回りなど。開店して諸事。
 複数の課題を書き出して一つずつ対処していく作戦を遂行するも逃避ばかりして進まず。こういう時はくよくよせずちゃんと逃避を楽しもう、と各所の小さな作業、例えば飾っている本の左右の隙間のバランスを整える、などをじっくりと行う。
 
 アルコール缶飲料を買ってきてくれたムトさんがぼくに差し出した缶ビールがノンアルコールビールで驚くと、「色が青で似てるから間違えた!」とのこと。直後にムトさんが自分の分であるいつもの緑色の缶のお茶割り焼酎を一口飲み、「んお!これもノンアルだ!こっちは緑だから間違えた!」と言っていた。
 閉店前に雑誌『南海 特集:キムズビデオ』を不忍ブックストリームの配信担当Sさんが買いにきてくださった。明日早朝から旅行に発つSさんに無理やり缶ビールを渡し「安住紳一郎の日曜天国」やドラマ「アオイホノオ」のお話などしてとても楽しい。

9月26日金曜日。
 前業で使っていた灰皿の清掃撤去、新しい灰皿の設置。岐阜でお会いした伊勢・ぽらん書房さんが車で使っていらした灰皿を拝見し、あーこれイイっすね〜などと撫で回しているうちに閃いて帰ってから探して3つ購入。店、家、車用。普段使っているフライパン型灰皿をコンパクトな蓋つき密閉型車載用灰皿に変えれば、吸い殻が露出しないことによる空気の浄化、喫煙場所の視覚的美化につながり、ひいては吸うタバコの本数が減り健康促進となる、という日常内の革命。ばんざい。ぽらん書房さんに大感謝。開店して諸事。
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 手帳編集部Iさんが現在視聴中というNetFlixのドラマ「コブラ会」の面白さを熱くお教えくださり、配信サービスNetflixに入会せねばならぬ、というここ最近抱えている焦燥感がさらに募る。

9月27日土曜日。
 前業にて数ヶ月前からストック場所を埋めていた辞書類を特価本として商品化する。学生時代から苦手で上手にできたことがないペン回しの特訓を始め、こりゃいいやと一旦は思ったが10分後には飽きた。開店して諸事。

 友人が東京から引っ越していってしまう話が2件。
 
9月28日日曜日。
 前業でなにをしたのか。開店して諸事。

 午後遅く、店の奥に下げていた黒いスーツやYシャツをかき集め、革靴のヒモをYouTubeで調べながら「ベルルッティ結び」で縛る。浮間舟渡駅でT書房タケちゃんと落ち合い、戸田斎場へ、先輩、T書店さんのお通夜の受け付けお手伝いに行く。務めたお香典管理は初めての経験で、なかなかの集中を必要とする繊細な作業だとわかった。多士済々な本屋さんたちが続々といらっしゃることに胸を打たれる。多分Tさんのお客様なのだろう、書店関係者ではなさそうな若者がぽつりぽつりと間をおいて数人いらっしゃり、それらの若者がTさんと対峙したであろうT書店さんの帳場に過ぎていった時間のことをどうしても想う。
 Tさんは若々しいかただったので、これからなにかと相談を持ちかける兄貴分になっていただこうという心積もりがなんとなくあった。今年の2月初頭の古書組合北部支部の忘年会で、酔ったぼくは、ビール党とのことで生ビールを繰り返し飲んで酔っていたTさんの髪のない頭頂の地肌を指先で撫で撫でしていた。「やぁめろよぉーせとくーん」とTさんはいつもの笑顔だった。
 Tさんの長年の盟友で、受け付け部のリーダーをしてくださったH書店さんのかっこいい外国車に驚きながらタケちゃんと同乗させていただいて帰った。北部支部の背骨である川越街道をゆく、フィアット車がレース用にチューンされたアバルトという車。東京の北の景色。

by ouraiza | 2025-09-29 17:57 | Comments(0)
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