アラコンダ    せと
 インターネットのニュースで偶然目に入った芸能人のコメントに「皆様の情頼を回復できるよう、真摯に活動を続けてまいります」とあり、「情頼」!?と驚いた(現在は削除されているが、画像にとった)。ただ単に「信頼」の間違いなのだろうか、「情頼」というあってもおかしくなさそうなことばがほんとにあるのだろうか。「信頼」よりも湿度が高い、感情的な依頼心を表したりするのだろうか。軽検索ではAIがさもそれがあるかのよう示してくるが出典がない。辞書はまだ確認していない。
 「取り急ぎ、要用のみにて失礼いたします」という言い方をお客様から教わった。ようよう。使っていきたい。

4月14日月曜日。
 午前中、後楽園のホームセンター、コーナンドイトに買い物へ。ぱぱっと済む買い物ではなさそうなので、近隣の文京シビックセンターの地下駐車場に車を停める作戦。停めることはできたが、買い物後にどこを見てもコンクリート壁の無機質な場内の停めた位置へ戻るのにおおいに道に迷い、警備員さんに数回尋ねながらやっと脱出できた。買い物に10分、車探しに20分。しかし池袋東急ハンズ無き今、コーナンドイトに通い慣れる作戦を一歩進められたことが大きい。
 営業はせず内勤。工作に従事する。以前からやってみたかった、「外文庫棚面出し空間アンコ置き大作戦」。アンコは、隙間を埋めるもの、という意味の用語。「ちょっとそこ高さ違うから低いほうにアンコ入れといて!」など。屋外に出している文庫棚の奥行きが深いので、お客様の手に取っていただきやすいようにいつも文庫を棚の縁よりも手前に突き出すように適当な按配で置いていたのを、ばしっとアンコを詰めることで一定化させたかった。
 買ってきた木の棒を合体させアンコとなる棒を作り、スプレーで赤く塗る。今回は色移り防止のために、油性透明ラッカーで表面をコーティングしてみた。
 数時間乾かして夜、棚に入れてみる。ひとまずはいい感じだが、固定はしないので毎日の移動での揺れにどう反応するか。工作後の缶ビールは美味しい。
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4月15日火曜日。
 休み。家窟にて無為に廃す。腎臓が不調な猫の玉の口に錠剤をひとつと針のないプラスチックの注射器でペースト状の薬を投入するのだが、玉が逃げられないナイスポジションを発見して非常に投薬のテクが向上した。

 ドラマ「沿線地図」を2話分観る。藤森麻子(岸恵子)さんが町の商店で買い物をなさっている背景に、ロケを眺めるギャラリーとそれを制御せんとするスタッフが映り込んでいて可笑しい。

4月16日水曜日。
 休み。
 午後、学習院大学の研究室へお片付けのお預かりへ行く。古めな校舎の古いエレベーターだが手入れが行き届いていて快活で美しい。ぴったり30箱を店に降ろす。
 用あって突発的にご近所史跡研究をしたムトさんに案内されて護国寺の墓所を散歩。陸軍墓地、大倉家、大隈重信山縣有朋など、雑司ヶ谷霊園よりも政治経済方面の重鎮が多く、一家の墓域が4畳半の部屋よりも広そうな管理された庭園が連続する。学習院大学も護国寺も樹がずっしり太く、緑の濃さにここが近所であることを忘れさせられる。学習院大学内の史跡もそうだが、護国寺のお墓の一件一件をつぶさにじっくり調べていったらとんでもなく勉強になるだろうと思う。

 ドラマ「沿線地図」最終話を観る。とても面白かった。人の間の震度1くらいの微振動がずっと容赦のない小声の残酷さを予感させて目が離せなかった。「分かる」ことと「勝手」ということ。山田太一さんのドラマにいつもある二項断絶の図式(そんな単純に割り切れないが)でいうと、「男たちの旅路」('76)が戦中派と戦後派、「高原へいらっしゃい」('76)が労働と個人、岸辺のアルバム」('77)が冒険と安寧、「早春スケッチブック」('83)が芸術と実生活、「沿線地図」('79)は親と子、か。いやそれぞれに全部ある気がする。ああ「ふぞろいの林檎たち」を観たい。

4月17日木曜日。
 前業にてただぼーっとする。開店して諸事。
 先日お預かりした30箱を査定、仕分け。店で基本的には扱っていない歴史関連なので新鮮で楽しい。北畠親房と畠山重忠を混同、鎌倉殿の13人にでてきたのは畠山重忠。吉野作造、吉野源三郎。
 
 ある大企業の自社ビルの1階にはエレベーターが1基しかなく、日々絶えず混雑、長時間待機せねばならない状況が社内全体を不穏な空気が満たす要因になっていた。しかしある社員が思いつき、エレベーターの横の壁に大きな鏡を設置すると、ある者は容姿を整え、ある者はそこに必要以上に時間に追われる自分を見、エレベーターをただ待つだけの時間が変質し、会社全体の雰囲気が良くなった。というお話を手帳編集部Iさんからお聞きした。

4月18日金曜日。
 前業で市場用のしばりを37束。開店して諸事。
 しばりに市場入札用の封筒をつけて車に積み込む。番台上滞留物の中から紙モノ類を細かく商品化。
 立ち寄ってくださった手帳編集部Fさんは職場で部署異動がありとてもお忙しそう。もう今日は早めに切り上げちゃいました、飲みましょう、とのことで夕方から缶ビールで楽しい。Fさんを含め3人の友人のご家族が大学に進学なさり、どのようなご様子なのか気になってお尋ねすることが多い。さてサークル活動どうしよう、という時期。軽音楽、ジャズ研、テニス、しかし授業もないがしろにはしたくない。うーむ非常に悩む。

4月19日土曜日。
 前業で文庫新書に値段つけ。

 午後から実家片付け隊の活動。思えば”実家を片付けに行ってどうしようと悩むだけで帰る隊”から進化しているのだった。あまりにも物が多くて半ば諦めながら途方に暮れつつ、とりあえず父の箪笥を空にする方向性で、古着屋行きとゴミ集積所行きとを仕分け満杯のゴミ袋を7つ増やし、「片付けが少し進んでナイス!」と缶ビールを開けた。片付けの本丸である父のアトリエには数十体の重いボディが澄まして立っている。
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 近所の入ったことのない食事処を目指して1階の寿司屋さんの奥の階段を登ってたどり着く2階のイタリアン食堂で軽打ち上げ。美味しい。兄がチャットジーピーティーにSF掌編小説を書かせてみたとのことで、タイトルは「無限カラオケ」。冒頭だけちょっと読み、いいねぇ、とおためごかしを言っておき、皿に戻った。

4月20日日曜日。
 前業をサボって開店して諸事。店員ノムが用事で休み、久しぶりのソロ番。近所で手創り市、みちくさ市が同時開催されていて賑やか。ツアーフィーリングの洪水に溺れる予感があり、飲み物持ち込みと無断撮影禁止の貼り紙を大きく掲示する。
 閉店後の番台端会議の主な話題は、個々の抱える日常のなかの罪の意識。山川方夫、カミュなど自動車事故で逝去した作家のこと。共通の知り合いMさんが郷ひろみに似ていること。
 ミヤモトくんは多分10年以上前の高校生のころ、東京から埼玉へ向けて歩いていた途中の荒川を渡る橋の上から、80cm(数字はすべて思い出しながらの予想)ほどの黒くて太い胴体をくねらせながら下流から上流へ川を上っていく巨大な蛇、蛇と言っていいのか、長さ5〜10メートルの生物をじっと眺めていたことがあり、あれは一体なんだったのか、不思議な感覚を抱え続けているとのことだった。荒川だからアナコンダではなくアラコンダだ!と興奮する。
 アラコンダについて想い、あまりにもご機嫌になりミヤモトくんを連行、終電過ぎまでビリヤードをしてもらった。

by ouraiza | 2025-04-21 00:39 | 工作 | Comments(0)
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