ctrl    せと
 ウィンドウズだと「コントロール(ctrl)」、マックだと「コマンド」というキーを押しながらのキーボードのショートカットという機能を、なんとなくパソコンを使っているうちに覚えていたのだが、初めて「ctrl」+「a」=全選択という技を友人から教えてもらいびっくりした。生まれた時からパソコンが当たり前にあった世代の人と同僚として働くとその体得具合の自然さに大きな差があることを感じる、と友人が言っていてとても腑に落ちた。

2月26日月曜日。
 定休日の無約束営業はせず休む。
 夕方から都営三田線蓮根駅へ。同行のムトさんの約35年前のある思い出を確認するために駅周辺をできるだけ隈なく歩く。個人が過ごしてきた時間と、とある街角に過ぎた時間、それを結びあわせる手がかりになるはずの蜃気楼のような記憶の風景に思いを馳せる。揺らめく場所を明瞭ではない記憶だけを頼りに探すことが現実的ではないとは思えない。そういう場所はたいてい見つかる。とは思いつつも今回は見つからず、セブンイレブンで缶ビールを買って飲む。
 ミヤモトくんと落ち合い、発行人ミヤモトくんがおすすめするお店で『月刊災難』創刊記念会。当初の目標だった中華太陽軒さんは満席で入れず、蕎麦のあさひさんと居酒屋巴さんにて。板橋区の未踏の路地の、熟年の素晴らしく居心地のいい2軒だった。巴さんではエンドレスで演歌が流れ、杯を空けるうちにだんだん細胞の呼吸が演歌調になっていく。ものごとを「好きな行為だ」とか「好きなものだ」とか判断することの嘘くささ、というか欺瞞というか、かんがえていきたいことだ。好きなものを見つけるべき、などとよく言ってしまう。
 志村三丁目から浮間舟渡駅へ新河岸川沿いを歩く。板橋区リバーサイド。新河岸橋と長後さくら橋は大きかった。ムトさんが撮影。後の軽検索結果だが、埼京線浮間舟渡駅 のホームは半分が板橋区で半分が北区、だった。
 造園職人でもあるミヤモトくんが、今年は沈丁花が咲くのが早い、と教えてくれた。
ctrl    せと_f0035084_11471224.jpeg
2月27日火曜日。
 休み。
 猛烈な風。猛烈では足りない危険な風。2年に1度くらいはある気がするが、そういえばここ数年こんなに危険な風力は無かった。店番のTTから風対策についての悲痛なメッセージが来る。外に棚を出すことができないのでツノだけ出したカタツムリシフト、とのこと。

 夕方店に寄るとやはり外の棚を一つ倒してしまったらしく、後付け工作で最上段に取り付けた飾り板がグラグラしている。
 木村衣有子さんが新しい御著書の納品に来てくださっていて、ジュンク堂まで一緒に歩く途中、びっくりしたんだけどあれなに?と焼き鳥母家さんのビルの壁に大きな電光スクリーンが張り付いているのを教えてくださった。明治通りに面して壁画が描かれていた壁がぴかぴかな巨大広告モニターに変わっていてとても驚いた。
ctrl    せと_f0035084_00163957.jpeg
 税理士の山田くんが繁忙期の3月になってしまう前に、とYBA(山田ビリヤードアカデミー)。4対10の敗け。絶対に決めるべき難易度が高くもないシュートをどうして外すのか、愕然とする。地軸がずれている。通算57勝113敗。硯家さんにて反省会。競馬の面白さを聞く。

2月28日水曜日。
 休み。
 雑司が谷のスーパー、オレンジマート前の100円ショップキャンドゥが店内を空になさっている。とてもお世話になっているので改装だけであってほしい。
 夕方、神田文房堂へムトさんが額縁を誂えに行くのに付いていき、帰路江戸川橋辺りを散歩。

 夜、映画「イコライザー3 THE FINAL」を観る。シリーズ中最もシャープだと思った。

2月29日木曜日。
 開店して諸事。
 一昨日のバイオレンスな風で傷んでしまった特価本スタンドの飾り板を修理。
 修理気分のついでになんとなく億劫で敬遠したままだった、20年使っている屋外オーニングテントの経年劣化の亀裂を修理。買っておいたテント布補修用のテープでテントの裂け目を塞ぐ。脚立に乗ることの恐怖感が年々大きくなっている自分の経年劣化は塞げない。
ctrl    せと_f0035084_00165710.jpeg
ctrl    せと_f0035084_00170950.jpeg
 夜、『名画座かんぺ』最新号の表紙作り。案ひねり出しの壺が、ごまかしの最後の一滴すらなくからからに乾いていて逆さにして振り回してもなにも出てこない。新作は無理と諦め、過去3作のデータを透明度を変えて重ね合わせ調合する。これは言ってみれば、vo.102とvo.110とvol.120のリミックス。まるで新作に見える。今後も使える忍法を見つけた。

 夜、ホラー映画「X エックス」を観る。

3月1日金曜日。
 開店して諸事。
 たまにある、お知り合いが重ねて多く来てくださる日。ぽつぽつとお持ち込み買い取りの小山をミックスして商品化など。
 美術や文学に魅かれている看護学校生のMさんが来てくださり、埴谷雄高『死霊』をお探しだったがあいにく在庫がなかった。少しお話しして帰り際、そういえば何歳?と尋ねると2004年生まれ、今年二十歳になる、とのことで驚いた。2004年は古書往来座が開業した年で、彼と同い年。なんと、人が生まれてからハタチになる期間なのか、と驚いていたら、5年ぶりに来ましたけど変わらないですね、と、1995年から営業していた前店舗にも通ってくださっていた懐かしいお客様がお会計のために番台にいらっしゃった。

 閉店後、いつも通りの帳場での井戸端会議にふと参加なさったご近所のSさんが持参してくださった瓶に入った透明な酒、スピリッツというのだろうか、をいただいて飲みすぎ、記憶が霧散する。ムトさんにひたすら怒られたという印象は残っている。胸のうちで「コントロール」キー+「Z」キーの「作業を元に戻す」操作を繰り返し、繰り返し。

3月2日土曜日。
 開店して諸事。透明な洋酒の心身への残り方が普段の缶ビールの気持ち悪さとは全く違い、ふわっと浮いて漂うような新感覚で余計に怖い。

 ふわっと時は過ぎていき夕方、買い取りご常連の極ご近所のお客様宅へ出張お預かりへ。お客様から、ヴィム・ヴェンダース監督の新作映画「パーフェクト・デイズ」の影響で新潮文庫版フォークナー『野生の棕櫚』がamazonでいたずらに高額化している、とお聞きする。

 『名画座かんぺ』最新号の折り、83枚。

3月3日日曜日。
 開店して諸事。晴れている週末なのでお持ち込み買い取りとその処理作業が多め。

 店の営業20周年記念に欲しいものは、と友人が尋ねてくれて非常に悩む。そもそもぼくは「周年」が、時という獰猛な大河が流れただけ、としか感じられず苦手なのだが、祝ってくださるというかたがたを拒むこともおおいに間違いだと感じていて、さてそれでは具体的になにが欲しいのか。とりあえず「車」が思いついた。ルノー・カングー、日産ラシーン、真っ赤なジャガーXJ。しかしどの車種もたくさんの本を運ぶ仕事には不向きそうで、まずは車種探しから始めねばなるまい。手頃なところでは工具、AC式の赤いグラインダーが欲しいと以前から思っている。もしくは赤い折りたたみコンテナ。いや、さらに友人と話していて欲しいものがわかった。しっかりした管理会社と契約しているビル一棟。うるさくなく閑静すぎない商業も成立する立地でエレベーター有り、1階が古本屋、2階が友人が運営する喫茶店、さらに上階は友人知人も住める住居(ペット可)、屋上に農業ができる畑、池。地下1階はビリヤード場にするか音楽スタジオにするか。

 『名画座かんぺ』最新号の折り188枚。配布してくださる地への発送26件。
 昨日お預かりしたオリコン3つ分の海外文芸系中山を査定、仕分け。

 現在抱えている問題、水道「Water」、エアコン「Airconditioner」、シャッター「Shatter」を統一して「WAS問題」と名付けることによって、粘ついて晴れないもやもやした不安から極ほんの少し開放された気がする。閉店後、今日の最重要事案だった「A」についての書類を作る。

by ouraiza | 2024-02-27 14:23 | Comments(0)
<< WAS    せと 蜆    せと >>