軟層    せと
8月7日月曜日。
 定休日の無約束営業のため開店して諸事。昨日番台に積み上げた新しい大山の値段つけをひたすら進めようと画策していたが、14時ごろから17時ごろまで瞬きを1回しただけで経過していて驚く。でた。最近の習慣、午後の喪失。
 その後じりじりと値段つけ。
 やや詩寄りの文芸系大山に値段をつけていると、触れたことのない本も多くて各々を少しずつ読んでしまい1冊の値段をつけるのに10分以上かかってしまうこともある。1946、1947年、京極杞陽(高光)句集『くくたち』上下、より。「咳込むめど目は物を見てゐてかなし」「大衆にちがひなきわれビールのむ」。

 
 本題業務のスタートピストルが遅かったせいでなにか実りのあることをしたくなり、新型ウイルスの蔓延が始まってからアルコールスプレーを置くことに使っていた本来スツールだった工作物を、フリーなスツールに戻す。なんだか大きな体制の変化を望んでいる節の一環にもなり、ややすっきりする。

 帰路友人宅で猫の番。夜、「高原へいらっしゃい」を観る。

8月8日火曜日。
 休み。
 午後、友人宅で猫の番、金魚に粒を二つまみ、朝顔の鉢へシャワーヘッドに改良されたペットボトルから水を撒く。
 店に寄って店番TTとアイスを食べる。

 阿部昭『未成年と12の短篇』を読み終わる。とても面白かった。内向の世代、という枠に入れられるようだが、思想や政治信条色を見せない純粋小説作家なのだなと思う。水のように端正な作文。同年生まれに池田満寿夫、藤子不二雄A、宝田明、山田太一、筒井康隆、井上ひさし、など。驚いたことに、歌手レナード・コーエンの誕生日が1934年9月21日。阿部昭さんはその翌日、1934年9月22日が誕生日だった。

 ぐずぐずと地下を書きYouTube徘徊など。冒頭だけ読んでいた須賀敦子『ヴェネツィアの宿』を読み始める。

 夜、友人宅で猫、金魚、朝顔の番をして「高原へいらっしゃい」を観る。

8月9日水曜日。
 休み。
 『ヴェネツィアの宿』で初めて須賀敦子さんを読んでいるのだがとても面白い。茎が硬い水色の花を想起。静かな文章、という感じの逆、饒舌だと思った。先んじて持っていたイメージとはかなり違う。勝手に持っていたハイセンスでアカデミックでポエジーな印象がまったく違ったことがわかった。ほとんどその真逆で、地域性があり身体的でバラエティな文章。1929年生まれ。野坂昭如、開高健の一つ上。栃折久美子さんの一つ下。

 困ったことに甲子園の中継も観たいしYouTubeではビリヤード世界大会の試合が各地からライブされていて、読書への壁となる。さて、なにを優先するべきなのか。A、読書 B、ブログ書き C、YouTube徘徊 D、動画作成 E、眼をつぶって深呼吸して瞑想。休むという休日の大義を全うしたいならEのはず、なのに、休日にもなにかに追われている感覚がある。廃テンションに徹することは難しい。

 夜、「高原へいらっしゃい」を観る。

8月10日木曜日。
 開店して諸事。諸事を続けているうちに夕方。また午後の喪失。前日までに店番TTが商品化してくれていた小山を配架。
 台風6号の沖縄での被害が大きい、と見たり聞いたりする。那覇、市場の古本屋ウララさん近くのアーケードの天幕に大きな穴が空いている画像を見る。

 来年版『名画座手帳』の表紙や扉についてかんがえてデータ作り。
 お客様のお一人が店内の工作を驚くべき細かな視点で褒めてくださり、有頂天になって望まれてもいない工作物の開陳と説明を続けて熱くなる。それにしても、早く次の工作を思い付きたい。

 手帳編集部Iさんがお話中によくお使いになる単語に「ひとしお(一入)」があり、むむ、一入、なるほど、と思う。

 夜、「高原へいらっしゃい」を観る。前田吟さん(役名大貫徹夫)がいらっしゃるおかげで苦手な店舗運営ドラマがまったく平気でとても楽しい。

8月11日金曜日。
 開店して諸事。
 編集長ノムと次の『名画座手帳』刊行に向けて前年分のデータや書類などの整理をずっと。堆積するあいまいな過去を一旦片付け整地しておかないと、またさらにこれから堆積する過去が安定しなのではないかという強迫観念。そしてそれを毎年ちゃんとできているのか、という堆積した層への不信。パソコンモニターの裏の部屋に押し込んでいるデータと、棚の一区画に重ねていく書類の、要るのか要らないのか未決の土壌が軟らかい層。
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 夜、「高原へいらっしゃい」を観るも飲酒がたたって途中から昏睡。

8月12日土曜日。
 出勤前に「高原へいらっしゃい」を観る。
 東京に向けてまっすぐ進んでくる予報だった台風7号の進路が右投手のスライダーのように西にずれている。
 開店して諸事。漠然とした諸事の連続。

 夜、ご近所のAさんにご協力いただき来週末に迫った「b-Spo」で使う出題物の準備。順調に完了する。
 硯屋さんにて軽打ち上げ。シメサバ美味しい。

8月13日日曜日。
 出勤前にジュンク堂さんで講談社学術文庫、平出隆『ベースボールの詩学』を探す。棚前に吊るされた現行の目録に書名はあるのだが棚には無い。三省堂書店さんにも行ってみたが無し。午後に店を少し抜けて大地屋書店さんにも行ってみたがやはり無し。

 開店して諸事。久しぶりにがっちり風雨ガードシフトで外の棚を配置。台風の影響だろう、雨が強烈に降ったり急に陽が差したりを繰り返す。

 ほとんどお客様がいらっしゃらないなか、途切れ途切れに集中しつつずっと文芸系大山の値段つけ。四六判、A5班が終わり大判だけ終わらず。

 夜、「高原へいらっしゃい」を観る。


by ouraiza | 2023-08-14 15:19 | Comments(0)
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