先週のある雨の日、ずっと気になっていた問題をふと調べてみた。明治通り沿いの、すぐお隣のローソン100さんを除外した古書往来座から近い、仕事に必要なコピー機のある2軒のコンビニエンスストア、北のセブンイレブンさんと南のローソンさんは、どちらのほうが近いのか。 雨だからと水を避けていつもより消極的な歩幅にならぬよう心がけて、まず北方向、池袋へ向かう途中のセブンイレブンへ歩く。古書往来座のドアからセブンイレブンのドアまで、102歩。念のためそのまま引き返しながら確認の計測。やはり102歩。次に南、新宿方向にあるローソンへ歩く。行きも帰りも118歩。 結果、セブンイレブンのほうがローソンよりも16歩分近い。 4月24日月曜日。 やらねばならぬ作業もあって定休日の無約束営業。ゆっくりめに開店して諸事。 午後、極ご近所様へ出張お預かりへ。オリコンに入れてガレージに積んでいただいていたものを車に積み込み、オリコンから出しながら店内に入れ、駐車場に車を戻す帰路にオリコンをお返しする。このところ大山を査定する時間がなく、ひとまず文庫と新書を縛り、コロの上に積み上げて保管する。 夜、少しだけ父親の資料整理、依頼寄贈モニュメント彫刻の調査。 4月25日火曜日。 休み。父親の依頼寄贈モニュメント彫刻に関して足りない写真があり、ひとまず手近の板橋区立文化会館と板橋区平和公園に行き、撮影をする。実家に行き店に運んで調査したアルバム以外の写真や資料を探す。全作品の詳細略歴リストや、祝辞や依頼記事の原稿類の束などが見つかる。ふと本棚の一番上の段の奥まった部分に無地の封筒を見つけ開いてみると、仲違いして心を閉ざし家族の写真は全部捨てたように我々には表明していたはずなのに、23年前に離婚した若き母親のたくさんのプロマイド写真、家族四人が仲睦まじくプレームに収まっている温かなファミリースナップがざらっと出てきて、ただでさえ情緒の平衡感覚を危ぶみながら進めている作業の手が完全に止まる。ヘイダディそりゃないぜ。なんだか辛くなっておいおい泣く。この情緒不安定は、8年前の父親の病での倒れ方があまりにも突然に重篤で、以降自分の整理を自分でやる気力も体力も認識力も失くし、そんなこと本人の意に沿うわけがないだろうという悲しみ、そしてそのことに自分は最善を尽くしたのかという懐疑を、ぼくの胸のベランダで乾かそうと物干し竿にだらんと干しているのに雨がなかなか止まずまだびしょ濡れな状態なせいだ、と思われる。明るくユーモラスな態度を外面にしていた父親の闘病中の無念、諦めという難題を、いつか雨に濡れたベランダから室内に取り込むことができるだろうか。 発見した写真の一枚。1977年ごろか。1954年に建てられた上板橋のアトリエ兼住居にて。すぐ後に祖父瀬戸団治は故郷長野のアトリエに移るので、この時期にはまだ新人彫刻家の父瀬戸剛の作品(白い石膏、1977年作「おんな」)と祖父の作品が同居していてめずらしい。私は中央の祖父の膝の上にいる小さなほう。 ![]() 他、ぼくの版画を初めて世に公開していただいた1991年刊、リクルート発行、『レジュメクス』第3号を見つけた。中学3年の美術の授業で彫ったものだが、ぐずぐずと自画像など描けぬと嘆くぼくに業を煮やした画家の母親が下絵を描いたものなので、当時、ありゃりゃいいのかしら、と思った。 ![]() 夜店に戻ると、岩合光昭写真集『虎』が猫の本コーナーに刺さっているので配架した店員TTに、あれ、虎、自然科学コーナーじゃない?と尋ねると、「猫科ですし、イワゴーさんだし、ありかな、と」とのことで、まったくだと思った。 NHKオンデマンドにて「100カメ」ボディビルの回を観る。改めて「ボディビル」という言葉は「ボディ」+「ビルディング」なのだなと気付く。なにかを作るときに「ビル」みたいに言うと大げさで可笑しいか。本を作るブックビル、とか。店作りはショップビル。 ETV特集「人知れず表現し続ける者たちIV」、画家西村一成さんの回を観る。キャンバスに乗せる自由は尊い。 4月26日水曜日。 休み。午後店に行き父親の資料整理をずっと。昨日実家で得た収穫を進行中のファイルに加味していくが、ああ、あれもこれもどこかにあったかもしれない、と思い出されることが多数あり落ち着かない。そういえば、浮間舟渡駅前の「たまのり」のことを忘れていた、とか、長野の小学校の「わかたけ」の写真を実家で探すのを忘れた、とか。夜きりのいいところで終わらせる。 閉店後、父親の修行時代、1963、1964年、太平洋美術学校の学生時代のものと思われる8冊のスケッチブックから主なものだけをムトさんに手伝ってもらいつつセブンイレブンでスキャン。 深夜、アルバムに収納されていないばらばらな写真類を家に持ち帰って分類しながら展示に利用できそうなショットを探す。 4月27日木曜日。 開店して諸事。店員ノムに手伝ってもらいつつ父の年譜からストーリーを想定しながらひたすら個人アルバムをスキャン。いつもとは違う傾向の気合が必要なのでYouTubeで映画「RRR」のサウンドトラックを流す。 1958年、父が中学校に入学した時の担任の先生のあだ名が「ヤブレダイコ」。3ヶ月後に東中学校と西中学校が合併、担任の先生も移動、「ガンバレヤブレダイコ」の垂れ幕を掲げた集合写真。いかにもヤブレダイコな先生が中央で笑っている。そういうことがありだったのか細かな学校制度を知らないが、病弱だったため1年遅く小学校に入学し、中学2年時に祖父が単身赴任していた上板橋のアトリエ兼住居に上京、都立高校に入学している。高校は「環境の変化でノイローゼになって」(新聞記事内本人談 偏頭痛、双極性障害を以後晩年まで患う)中退。そして祖父に彫刻を教わりながら日暮里の太平洋美術学校に通う。しかしこの太平洋美術学校に入学した年が、1962、1963、1964年のいずれかで、特定できない。1967年、22歳で大きな展覧会に出品して事実上のデビュー。 スキャンした写真を使って回想の動画を作りたいと思っているのだが、静止画ばかりで成立させることができるのか。だいたい2000年以降、祝賀会、懇親会などパーティ会場で得意の立ち回りをしている写真ばかりで、多分その回想の映像は2000年前後でエンディングを迎えてしまう。 閉店後ふと思いついて、ムトさんとノムに手伝ってもらい乱雑に積み上げたアルバムを暗い中でスポットで照らして念の為の動画を撮影する。 4月28日金曜日。 開店して諸事。父親の資料整理の最終段階。個人アルバムからのスキャンに漏れがないかをチェック。2014年、病に倒れる前の写真を見つけてついに発見、と喜んだが、椅子に座った父のズボンのチャックが全開なので悩む。トリミングすることにする。 4月6日から続けていた父親の資料整理がついに一応の一段落。図録、ポスターとチラシ、展示のための研究に必要な資料とメモリースティックに入れたデータを一箱に梱包して美術館に発送。 すぐに手を伸ばせるように番台横に広げていた、美術館に発送しなかった分の父親のアルバム類を一つにまとめて箱にしまいはみ出たものは縛り、一旦店の奥に積み上げる。これでついに手が離れた、とぐったり。番台でしばらくシビレクラゲ。 夕方、目に入ったものの感想を全て質問形式で話しかけていらっしゃる、こちらの意識と喉の筋肉を数分以上絶えず使わせることにためらいをお持ちでないよくいらっしゃるお客様が、ちょうど店員ノムが手を動かす仕事をしていて反応が期待していたものではなかったのだろう、「あれ、なんだかAIののむみちさんみたいですね」と言っていて、AIの!となんだか可笑しかった。 4月29日土曜日。 久しぶりに父親の資料整理から遠ざかることができる日。しかし一つ決定事項があればその関係者への進捗状況報告も必要となり、電話連絡を複数。学芸員さんが父親の展示の会期中にギャラリートークのようなことを計画していらっしゃり、依頼へのきっかけとなるご挨拶などもする。 久しぶりに視線の全角度を店に向けることができ、「名画座かんぺ」作成で忙しいノムに奥にこもってもらい、番台で本を触る作業。 夕方前、女性のお客様がご精算なさりながら、ブログ‥‥読んでます‥‥と話しかけてくださり、え!まさか往来座地下のことですか!そんなことあるのですか!ととっても驚く。足元の土地に余裕があったらひっくり返っていただろう。とても嬉しすぎて周囲にあるフリーペーパーを手当り次第押し付けて差し上げたが絶妙にんなもの要らねえオーラを感じながらの状況がとても楽しかった。 夜、10年以上ぶりだろうか、天井近くに並べている百科事典と赤い鳥の復刻セットを触って動かした。令和5年に百科事典を売っている、というシュールはぼくの陰気な愉しみの一つ。 閉店後、父親の資料研究の一段落をセルフ労いしたくて硯家さんにて小宴。少し前から父親の回想映像にもしBGMを入れるならなにか、を悩んでいるのだが、今のところの筆頭の候補であるジョン・ケージ「BNADⅠ」という曲を、店員でプロの声楽家でもあるリンタロウさんに聴いてもらいながら相談すると、「ああなるほど、こういう『無機質』ですね、なかなか無いですね」とお応えくださった。「嬉しいとか悲しいとか元気とか美しいとかそういうんじゃない」、というのがぼくのイメージを言い表す限界だったのだが、「無機質!!それだ!!」と教わることができた。アルノルト・シェーンベルクという作曲家のことも教わる。なんたることだろう、「無調」。父親のことを表すのに「無調」でいたいのだが、没後3年ではまだなんらかの調べが伴ってしまうだろう。シメサバがとても美味しい。 4月30日日曜日。 カロリーゼロの甘味料、味の素の「パルスイート」を愛用しているのだが、今朝いつものようにコーヒーに一たらししたら、見たことのない丸くて重そうな波紋が広がりコーヒーの水面が汚染された海のような状態。え!と驚いて手を見ると、持っていたのは日清「キャノーラ油」だった。飲んでみると当然甘さはなく喉に張り付く油の幕。ルックスがパルスイートとよく似ていた。 開店して諸事。番台であれやこれやしているうちに夕方になってしまい、慌て気味に『名画座かんぺ』最新号の表紙を作る。布シリーズの第2弾。墨汁を多めに使っても紙よりも吸収がよく乱れない気がする。素材自体に表情があるので版画は最小限でもいいのかと思う。 帳場周囲に居合わせた誰かが映画「RRR」に夢中な状況のことを「アル中」と言っていた。 ![]()
by ouraiza
| 2023-04-30 13:03
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