柳ケ瀬    せと
2月6日月曜日。
 王道生卵以外で納豆にマッチする食材を探す納豆バディ選手権。先週候補として挙がったヨーグルトを納豆+生卵on白米にふんだんに載せて食べる。決定的な過ちは、低糖が加味されたヨーグルトを気にせずに使ったこと。同じ発酵食品同士どう交信しあうのか楽しみだったのだが、甘めなヨーグトと納豆はまったく交信せずお互いを無視してそれぞれに強弁する。口内で納豆とヨーグルトがくっきり分裂している感覚は面白かった。過去1番のナシ。次回は酸味がちな無糖で試したい。そうか、酢ってどうなのだろう。

 ビリヤードの9ボール世界大会、ワールドプールチャンピオンシップ決勝戦ハイライトを観る。スペインのサンチェス・ルイスさんが優勝。準優勝、シリアのモハマド・スーフィーさんがとても独特なスウィングで自由に楽しんでいらっしゃりかっこよかった。
 午後遅めから定休日の隠密営業。
 昨日の事故による「おんばしら様」の小さな傷について、管理会社さんに連絡して説明。いかに御柱様が頑強で頼もしく神聖であるかを熱弁すると担当者さんは苦笑いなさっていた。
 週末では終わらなかった積年の中山切り崩しの仕上げ。後日トピックとして取り上げたい約10種ほどだけ別場所に移動させて、とりあえずずっと光を浴びていない番台の表面を露出させることはできた。ここに長く保留することになるもの、符丁でいうと「セトやる」は置かないという取り決めを作る。
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 番台の開放がめでたく、世界の山ちゃんさんにて軽打ち上げ。一部食品が尋常ではなくしょっぱく、このしょっぱさは鳥貴族さんでも感じたのだが、塩を振るコックさんの手元が狂ってぶちまけたのか、塩の容器の穴が大きく開いてしまっているのか、ぼくの味覚が変化したのか、不思議でなんだか可笑しい。ムトさんやノムは確かにしょっぱいがそれがアルコール飲料注文を誘引する作戦であって、若い時にはまったく気にしなかった程度だろ、老化だ老化、と言うのだが、このしょっぱさは若い時でも「しよおっぺ!!」となるんじゃなかろうか、と思う。しょっぱいものは大好きなのだが。

2月7日火曜日。
 休み。このところの芯を貫通するような寒さが緩まっている。しかしまだ油断はできまい。
 廃テンションにてYouTube徘徊と久しぶりに動画作り。b-Spo vol.18「レファ1グランプリ」が約50分もあり、かつ問題に挑んでいる競技者さんたちの反応が面白く大きくカットできるシーンが少ない。
 漫画『ブランクスペース』(熊倉献著/小学館)1巻を読み終える寸前に、あれ、これは以前に1度読んだことがあるぞ、と気付いた。

 夜、映画「インファナル・アフェア」を観る。

2月8日水曜日。
 朝日を浴びてから眠り午後まで昏倒のつもりだったのに午前10時頃、こんなに典型的な人がいるのかと驚くような”ザ・鼻をつまんだままツルツルと喋り高踏的で相手をコバカにしていて訳もなくこちらが謝りたくなる営業マン”からの楽天ペイのなんらかの確認の電話を受けてしまい不条理の海底に沈む。解約をお約束する。
 夕方まで茫然と動画作りをしながら休み。週末からの旅行に備えて洗濯をしベランダに干してすぐに雨が降り始め落ち込む。
 夜、隣町の出張買い取りご常連様宅へ伺いオリコン4つ分をお預かりする。学生時代からお呼びいただいていて、お客様は今玄関先で赤ちゃんを抱いていらっしゃる。

 映画「インファナル・アフェアII 無間序曲」を観る。情緒喧伝過多。

2月9日木曜日。
 開店して諸事。
 急ぎ気味に、昨日お預かりした中山と、郵送していただいた5箱を査定。月曜日から番台が更地なので非常に作業がしやすく、ああ机が広いってなんてエルドラド!と感動する。

 査定は終わったが仕分けは途中まで。
 夕方から椎名町にて多岐祐介先生とOBとで小新年会。直葬、というスタイル。線香が減らない問題。「北広島」、「東長崎」などの土地名がその土地以外の場所にあることの歴史。ある目立たないが確実に存在するジェネレーション、などなど。無性に楽しくてビールを飲み過ぎ、帰路、自転車に乗らず押しているのに歩道の縁石につまずいてこけ、地球にショルダーアタック。恥ずかしくてちょっと受け身の練習しているだけです、という体ですっと立つ。

2月10日金曜日。
 久しぶりの残念で明瞭な二日酔いでぐらぐらしながら品川から新幹線で名古屋、東海道本線で岐阜へ。品川から2時間以内で岐阜駅前の金ピカ織田信長像の前に立つことができ、ちか!と思う。出発した時に降っていた雪は新幹線に乗って雨に変わった。友人ツレッチとタイコーちゃんが営んでいる古書と古本徒然舎さんでのムトさんの巡回展「百椿図」のお手伝い。

 9年前、2014年の夏、徒然舎さんが新店舗に移転しようとなさっていて、物件にはまだダンボール箱や縛った本が無造作に積み上がっていただけの頃にお伺いしていた。今は同じビルに、店舗と二つの事務所に倉庫、という株式会社組織になっていらっしゃる。初めて拝見したのだが、個人商店の枠を超えたチーム運動体であり、ふんだんな仕入れ量とそれをどう回転させるか練られたシステムがある。そんな組織体の店舗にツレッチがぼくが以前から尊敬している個人技であるツレッチタッチをしっかり加味して、ご蔵書も活き活きととてもフレッシュで楽しい。ぼくは山口誓子署名入り『定本 凍港』を見つけて購入。

 ホテルにチェックイン後、ムトさんが銭湯に行くのについていき広いロビーで待たせてもらう間に、徒然舍さんがその本棚に納品なさった漫画のなかから手塚治虫「ゴッドファーザーの息子」「紙の砦」、吉田聡「スローニン」を途中まで読み、展示の手伝いへ。いつもどんなサイズでオーラな壁に飾るのか事前に調べずに現場に行くので、即興ライブのようにムトさんがここにあれ、あそこにそれ、と決めていき、ぼくが粘着可塑性ゴムいわゆる引っ付き虫をちぎりまくって貼っていく。いつも通り値段を決める段になり、えーとそれ2万円ぐらい、、、ぐらいってなによ、そんな表示ないでしょ!みたいな悶々が起き、それがむにゃむにゃと適宜どうにかなって終了。徒然舍さんの柱2本とガラス面を使わせていただいた。

 ツレッチとタイコーちゃんが囲炉裏焼き・いろり庵さんに連れて行ってくれて軽打ち上げ。串に刺さった食材が満載された巨大な皿を店員さんが卓の前に広げ、そこから好きにつかみ出した串を卓上の囲炉裏で焼く初体験の流れ。ディズニーランドよりおもしれえ!とムトさんが唸る。
 タイコーちゃんがジリジリと焼き育てた椎茸が完成する一歩前で裏返った傘の皿に醤油を数滴垂らして仕上げているのを見て、あーぼくも次それ!と思う。


2月11日土曜日。

 9年前の来訪時に屋上のテラスレストランで鮎の食べ放題を満喫したスポーツ施設でもあるスポーツパルコというホテルに宿泊。鮎パラダイスはすでに閉業。階段を使うと何階かにあるプールに通う水泳パンツの小学生たちとすれ違う。ぼくは喫煙ルームにしか泊まれないのだが、丁寧にがっちり隙間をコーキングされた窓がまったく開かず燻されるのは初めてで楽しい。

 ツレッチに教わった喫茶ニューパロマさんにて昼食にカツチーズカレー。美味しくて盛大で汗が噴出。
 アーケードが張り巡らされた柳ケ瀬商店街を3度目の来訪で初めて時間があってゆるゆると歩けたのだが、どことも比較することができずとても面白い。歴史的遺産のような建物(それらも別の地区にたくさんある)ではなく、多分60〜80年代建造ではなかろうか、東京ではどんどん取り壊されている小さくてキュートなビルディングがそこかしこに残っていて現役で息づいており、よくよく眺めているだけですぐに時間が経つ。

 その後しばらく徒然舎さんの店内の隅に佇ませてもらいながらお店の活気のある様子を観察させていただき、徒然舍さんの仕組みというのは、個人商店(内密性)と企業組織(合理性)が編み込まれて一色を成す、文学と科学を両立してその中間点にある稀有なものだ、と思った。

 夕方から長良川方面の銭湯に行くムトさんについていき、河原をぶらぶら散歩する、など。金華山の頂上にいじくり過ぎたジオラマのように乗っている城がどこからも見えて可愛らしく楽しい。前回来た時に初めて生の鵜を見ることができた鵜飼屋地区を歩いて鵜を探したが、鵜飼さんの鵜小屋の中から鳴き声は聞こえるが、季節のせいだろう、お部屋にこもっているようで姿は見えなかった。
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 徒然舎さんにて巡回展記録の撮影をし、ツレヅレーズが引率してくれて菊川酒造東店さんで軽打ち上げ。目を疑う巨大スリコギに山盛りなガリバーサラダ。おしぼり袋鎌鼬というタイコーちゃんの秘儀を教わり、「何度も店名でエゴサしとんのに誰も書いてくれないじゃんねー」な件、タイコーちゃんも牛乳愛好家、ギューニャーであることなどを語り合う。ギューニャー内派閥としては、タイコーちゃんは1日の内いつでも飲むジュース派、ぼくは朝晩の締めに飲むメモリアル派、だとわかった。二人と話をしていると自動お喋り装置と化し、その装置の電源が尽きない。

 帰路、路上にソファとストーブを出して談笑しているキャッチメンの間を抜けて散歩をし、ヌード劇場まさご座さんの外観を見る。

2月12日日曜日。

 昼、ツレッチとタイコーちゃんと徒然舎周辺を散歩してからロイヤル劇場さんのビル内の喫茶店コメディアンさんにてカツハヤシライス。

 午後、タイコーちゃんがご常連のご近所様宅へ出張買い取りへ行くのに手伝いとして連れて行ってもらう。日産NV350の助手席にはツレッチやスタッフさんが楽に座るための独自の足置き場があった。丁寧で親切なタイコーちゃんの出張買い取りテクを少し(というのはお客様も慣れていらっしゃるので導線がとてもスムーズで、悩んで進行する難題ではなかった)学び、つつがなく完了。
 どんなに大量でも厭わない、名古屋の老舗太閤堂書店の2代目であるタイコーちゃんの仕入れ力。動く筋力。お客様を笑顔にする「タイコームーブ」。徒然舎さんには、感覚を司りディレクションするツレッチの「ツレッチタッチ」、スタッフさんたちの努力によるチーム内合理化システム、そしてそもそもの材料を購入運搬する頑強かつ柔かな「タイコームーブ」がある。文学、科学、体育の総合体。土地柄や個々の事情を加味しながら古書、書籍を商材として生きていくために苦悩しながら錬成され、さらにこれからも機に応じて練られるであろう鮮烈な発明、だと思う。

 柳ケ瀬がかつて繁華街として隆盛した一因という、今はほとんどシャッターを閉じている繊維問屋街の広大さに驚きながら散歩をし、東海道本線にて名古屋、別の電車に少し乗って東山公園駅。書店ギャラリーのON READINGさんへ行く。

 新幹線でYouTubeの「柳ケ瀬ブルース」各種を漁って聴いているうちに品川に着く。口ずさみたくなるサビのキメコブシが脳内に渦巻く。0時ごろ店に戻ってほんの少し諸事。柳ケ瀬ブルースでは「夜に泣いている」が、ぼくは昼に夜にたくさん笑った。柳ケ瀬サンバ。


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by ouraiza | 2023-02-14 15:09 | Comments(0)
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