鵜、ぼんやり    せと
 どうも鈍化して調子が悪いこの数ヶ月なのだが、火曜日に、あ、症状が同じだ、とあるニュースを読んで直感した。
「多くの鵜ぼんやり」鵜匠、危機感 長良川鵜飼中止最多
10月18日月曜日。
 晴れ。定休日だが『名画座手帳2022』の発売直後なので臨時営業をする。開店して諸事。

 毎年『名画座手帳』を買いに来てくださり”手帳につける透明カバーがぴちぴちでチューブトップのバドガールみたい”というお話を楽しくしているお客様からかっこいい瓶のバドワイザーを頂戴する。後にいただいたご連絡で、今年は売っていたカバーの都合でバドガールではなくふわっと緩めの見えすぎタイプ、になるとのことだった。

 『名画座手帳2022』をご購入くださった香港映画フリークのお客様からジョニー・トー監督作品の流通について教えていただいた。

 閉店時間間際にご来店くださったギャル二人組が、店内探索をお楽しみになって退店なさる直前に目に入った『ドカベン』全巻セットについて、「なにこれウケる〜〜ドカベソだって〜〜ドカベソ〜〜」と言っていた。

 夜、猫が暖を求めてまとわりつくのが重苦しく、やっと敷いたホットカーペットへ誘導、拡散させる。

10月19日火曜日。
 午後出勤して準備、市場へ出品へ。古書会館前の八木書店さんへ東京堂書店さん分の『名画座手帳2022』を納品。他販売店様へ手帳を発送するため古書会館となりの小川町郵便局へも初めて入る。
 帰路、後楽園の元ドイト、現コーナンドイトに立ち寄ってビスを買う。

 ユーチューブミュージックに聴いてみたかったさだまさし「51」があり、聴く。アメリカのスタジアムで背番号51の日本人外野手がフェンスを登ってホームランを掴み取って球場を沸かせた、多分その選手が生まれた国のことをほとんどの観客は知らない、その国はアメリカの51番目の州なのかと皮肉を言われることもある、という大意。

 「多くの鵜ぼんやり」という新聞記事をネットで読んだ。ぼくは鵜だ、とストレートには思わないが、ぼんやり、というのはとても心に当たってしまう。

 夜、映画、柳町光男監督『さらば愛しき大地』を観る。覚醒剤中毒の男のまだ小学校入学前くらいの息子が結婚式会場で赤飯をかきこみ続ける。(セリフは大意)「あらやだ、なんだかあの子お父さんにそっくりね」「赤飯中毒なんだよ」。

 深夜、地下を書く。

10月20日水曜日。
 なんとなくテレビで映画「グラン・トリノ」を流しながら地下を書く。頑固な老人が心を許すスピードが早いかちょうどいいか、いつも手帳編集部朝さんと議題にしているいわゆる”雪解け問題”について注視する。レンジでチンか、自然解凍か。あまり意識していなかった点で、ウォルト・コワルスキーの雪解けには自身の病気の進行が大きく関わっていることに気付いた。

 夕方出勤して、やはり風が強いとガラス窓に揺れてぶつかってしまう外にぶら下げた調光式LED電球に、ひとまず応急処置として緩衝材を巻く。
 
 東京に用のあった金沢の出版社龜鳴屋・勝井さんがお立ち寄りくださった。ぼくは勝井さんにお喋りをし始めると止まらなくなる。勝井さんは腰に手を当てて、痛い、とよろめいていらっしゃった。ヤジロベエポーズは一度だけお願いして決めていただいた。ちょうどいい機会だったので、同行のカメラマン小幡さんも一緒にちょっとだけ温めているいつ使うか未定の動画を撮影。
 そば居酒屋雲吉さんにて軽会食。富山や金沢、北陸で使われる形容詞「キトキト」の反対語は「カスカス」ではないか、など。

 深夜、動画作り。当初は素材さえあって編集作業ができればなんでも楽しかったのだが、だんだん宣伝的要素が入った動画は作っていてウキウキしづらい、と気付いた。 

10月21日木曜日。
 開店して諸事。
 番台上で大型盆栽になりかけている保留物を少しずつ値段つけして空に放つ。

 夕方から多岐祐介先生宅にて、現役学生と共に学園祭企画に関するお手伝いを少し。先生が「貫一お宮」とおっしゃったとき、学生Yさんが「え?甘味調味料?」と聴き返していたのがとても面白かった。かんいちおみや、と、かんみちょうみりょう。鼓膜のフレッシュネス。
 居酒屋博多屋さんにて軽打ち上げ。楽しい。

10月22日金曜日。
 雨。開店して諸事。
 主に『名画座手帳2022』と『名画座かんぺ100』の発送作業。プリンターのケーブルを替えておいて本当によかった。
 風で揺れてガラス窓にぶつかる調光式LED電球をぶら下げる場所を変更。

 午後、足りなくなったOPP袋を買いに要町公徳堂さんへ。いつも買っていた茶色いビニールバッグが製造中止、と店員さんに告げられる。オレンジのラベラーシールもそうだし、備品業界の諸行無常が切ない。

 保留物の値段つけを一気に進めたいのだが、なに、と記憶もしておけない小さな諸事がもぐらたたきのもぐらのように現れるのでピコピコハンマーで対処するうちに夜になる。軽い打感は残るが芯まで届いた爽快感は無い。

 クリント・イーストウッドは「グラン・トリノ」でそうであるように、劇中で死を演じることがある。しかし、シルベスター・スタローンはまだ劇中で一度も死を迎えていない、ということを手帳編集部Iさんから教わる。

 帰路、近所にお住まいの、緊急事態宣言中は基本的に休業していたチェーンの居酒屋の店長とファミリーマートで偶然会う。来週から23時半まで営業、明日は必ず包丁を研ぐ予定っす。と楽しそうにおっしゃっていて、そうですかじゃ行く行く〜とこちらも嬉しくなって約束してしまった。

10月23日土曜日。
 試しに限定公開していたがやはり音量調整がうまくいっていなかった動画を修正して公開し直す。音量はいつも難しい。世界基準があるのだろうか。すべての機器に個別の音量設定の性格がある中で、統一的に難のない音量を作ることができるのか。
 『名画座手帳2022』納品後の開封から商品化、なにをしても円滑に事が運ぶなどということは有り得ない、な動画です。

 晴れた土曜日でお客様が多いのだが、山手線内回り、池袋〜大崎間が工事のために運休していることも影響しているのだろうか。

 池袋東口駅前にあった盛明堂書店さんを、お祖母様のご兄弟が経営なさっていた、という方がご来店くださりとても驚く。それに関する資料をお探しで、東京古書組合50年史と100年史をひとまずはおすすめするが、組合北部支部に所属した個別の店の歴史を繙くのは非常に難しいことだと個人的には感じている。古本屋という存在が特殊ではなく一般的だった時代の、自由な性格が色濃い職種で変遷の激しい雑駁な地域の一店の在り様は、風のようでもあるかもしれず、岩のようでもあるかもしれず。ご当人が晩年に自分史などを刊行なさっていればいいのだが。暫時溜めている周辺書店資料から、盛明堂書店さんの値札ラベルをお贈りする。 

 夕方、「あの、、、読んでみたらつまらなかったので返品してください」、と祥伝社文庫、伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』を差し出すお客様がいらっしゃった。同内容の要求をお客様が訴える電話を受けた、という店員からの報告を受けたことは過去にあったが、実際に目にするのは初めてで驚く。しどろもどろお断りした。

 昨晩店長に行くと約束をした居酒屋新橋ヤキトンさんにて小宴。1年ぶりくらいだろうか。そうそうこんな感じだったと思い出しつつ美味しい。

10月24日日曜日。
 納豆ご飯ベストバディ探索実験、今回は永谷園のみそ汁「しじみ70個分のちから」をかけて食べる。納豆ご飯に味噌汁をかけて食べるのが好き、とかなり以前にテレビでタモリさんがおっしゃっていたのを記憶があるのだが、やはりとても美味しい。さらさらと流し込める。

 晴れ。開店して諸事。

 今日こそは脳内最重要必務である『名画座手帳2022』のアマゾンへの登録を遂行する、と思っていたのに時空の亀裂から湧き出てくる諸事をこなすうちに夕方がするっと通過して夜になる。

 店のストッカーに詰まっていたのを片付けて一旦自宅に持ち帰っていた雑貨類の箱から気になっていたクラシックカメラを取り出してつくづく眺める。カメラに対する興味がまったくなかったのだが、なんとメカニカルでかっこいいのか、と感嘆。検索すると、ニコンS2、という種類だとわかった。今度詳しい方に操作を習って撮ってみたい。

 夜、中島貞夫監督の映画「暴動島根刑務所」を観る。県警対組織暴力も先週観て、松方弘樹さんのことをバブリー釣りおじさんタレントとだけイメージしていたことを大いに恥じる。哀しき獰猛。宿命的に飢えた獣。映画ではもちろん、ぼんやりした鵜はすぐに殺される。
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by ouraiza | 2021-10-25 03:30 | Comments(0)
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