なんて凄いのだろう、と目にするたびに感慨を催す仕事をなさっている方々が近所にいらっしゃる。環状5号線工事のため、都電荒川線の踏み切りの交通整理をなさっている誘導警備員の方々。 踏み切りは雑司が谷2丁目と3丁目の境界にある。そこに集中的に誘導員さんたちが立つようになったのは何年前からだろう、2、3年になるか。都電線路の地下に車のトンネルを掘るという大規模で長期の工事で、その踏み切りが通勤路の途中にあるぼくは、ほとんど毎日、誘導員さんと顔を合わす。 詳しいシフトはわからないが、24時間誰かが必ずその踏み切りで交通整理をなさっている。工事の進捗状況によって変わる一方通行の車線、徒歩や自転車移動をしている少なくない住民と、ウィンカーを出したり出さなかったりする自動車運転手との攻防の差配、大通りでもない狭い横丁のすれ違いの緊張感。一般的な帰宅時間の夕方にはそれこそ種々雑多な通行で混雑する。 赤く光る誘導棒の振り方や早く的確な判断の仕方などはテクニックの範疇で、ぼーっとしているぼくはいつもその指示に助けられているが、それがお仕事なのだから、技能の問題と言える。しかし、長くその路上に立ってお勤めしている方々が、もちろん職務を優先なさってほんのひと時の隙間が訪れたタイミングでだけのことだが、その場所ですれ違う有象無象の住人たちの顔見知りとなって毎日挨拶を交わしているのは、技能の範囲を越えている。 数匹の犬と散歩中の女性に、「あれ、今日はベスがいないのー」と話しかける女性誘導員の方。おじさんが「負けたー」と男性誘導員さんに声を投げたのは今日の競馬の結果。「あらー今日はずいぶん酔ってますねー」「お!今日は早めのご帰還ですね!」とぼくにも話しかけてくださる。近付きすぎず遠ざけすぎない絶妙な関係の案配を、繰り返される一瞬のすれ違いのなかで感得して実践なさっている皆さん。とても難しいことだと思う。今この町の表情に一番通じているのは確実にあの前線に立っている方々だろう。外交すべきか内向すべきか判断のつかなかい路上での、人というナマモノとの静かな長時間の交差を経てやっと得られたり得られなかったりするのであろう、声をかける勇気や無視への慣れ。 工事終了予定を告げる看板に書かれていた日付けが、「令和1年12月27日まで」から「令和4年3月31日まで」に延長されていた。えーまだ工事続くのか、すっきりしないな、という気持ちがまったく無いわけではないのだが、一方で、工事が終わって誘導員さんたちがいなくなってしまうのがなんとなく寂しい、という気持ちが芽生えている。もし彼らのうちの一人が選挙に立候補してくださったら絶対に投票するのに、とどんな仕事をしているのかさっぱりわからない顔と「たかいきゅうりょうがほしい」としかルビのふり様がない標語をギラギラと路上に並べた候補者看板を見て思う。 先日、ウイルス感染拡大防止の一時休業があけて久し振りに居酒屋で酔った帰り道、「こんばんはー」と挨拶してくださった誘導員さんに、いつもどおり歩を止めないまま、うっかり「ごちそうさまでしたー」と大声で返してしまった。背中で笑顔のだはは、を聴いた。 降ったり止んだり、結果店としては降ってると判断せざるを得ない天気が続き、定休日によく晴れた。数年前に水曜日を定休日にしようと試みたが、落ち着かずに定休日制を廃止して以降の月曜定休日なので、定休日事情のサンプルがまだ少ない。今のところわかるのは・よく晴れる(営業日に悪天候が多いと余計にそんな気がする)・月曜定休日あけの火曜日に対する申し送りを密にする必要がある。・定休日あけの火曜日に通販の対応が溜まっている。・定休日には宅配便が受け取れない。ということ。 発送と諸事をしに出勤。 夕方、発行者ノムから督促がきたので、ラジコで「明石家さんま オールニッポン お願い!リクエスト」を聴きながら『名画座かんペ』最新号の表紙作り。定休日だが結局店に6時間いる。 業界紙なのでお客様に頒布できず俎上に載せ辛いのだが、今月の「古書月報」第500号がとても面白い。巻頭特集「書店票に見る東京の古書店」(東京古書組合のサイトに転載されています)は広大な過去からエールを送られているような気分に勝手になり嬉しく楽しいし、緊急事態宣言下の状況を記した古本屋のみなさまの日記やコラムもとても興味深い。読んでいて思い出したのだが、あの明日から休業すべしと迫られた4月15日水曜日の夜8時頃、悩んだあげく(深夜にもっと悩むことになるのだが)古書音羽館の広瀬さんはどうなさるのだろうか、と突発的にすがりたくなり、音羽館さんに電話をしたのだがお留守だったので、機に応じて早仕舞いなさったのだろうと想像していた。広瀬さんのその日の日録には、朝から宅買いに行かれ、夕方組合からの緊急メールを知らされ、「そんなこんなで店に戻ったのは八時すぎ。」とあった。 休業という突然の新体制における心象がうまく言葉にならなかったのだが、ひとつわかった。「のぼせる」。 深夜、NHKオンデマンドにて『アナザーストーリーズ「熱気が生んだ真夜中の解放区〜オールナイトニッポン伝説」』を観る。亀渕昭信。 6月16日火曜日。 買取りの調整、諸事、市場の準備をして出品へ。古書会館で公費支払いに必要な価格認定書を発行してもらう。 病院の面会禁止が解け、3月末以来の父の見舞い。調子が少し悪くナースステーションそばの病室に移動。 夕方、古書信天翁センパイが店番なさっている早稲田丸三文庫さんまで散歩。近藤十四郎さんがいらっしゃり、皆で高田馬場鳥良へ。近藤さんからアメリカンスピリッツの葉の量、沖縄ツアーのお話しなどお聞きする。 6月17日水曜日。 北部古書会館にて会議。会館の近所のセブンイレブンが空っぽになっていて、店舗の前の広い駐車場も空っぽで、そこに車を停めてしまおう、としばらく悩んでやっぱり止めた。 脱線のような脱線じゃないような意見が提案に成長してなんとなくそれが繰り返されて安全牌が決定されていく。「ソウメン係」にコ本やさんがなってくれた。 「休業中の店にさ、普段はぜんぜんないのに、やたら『お店は開いてますか?』って電話がかかってくるんだよ。よく訊いても探してるジャンルとか書名は言わないの。多い時は1日3回も。ありゃ絶対協力金払いたくない都のスパイだよ。そんな監視なんだよ。」とベテランの方。往来座には1ヶ月半の休業期間中3回ほどあったが、ほんとだろうか。 店番TTが、おじいさんが駆け込んできて、「マスターに伝えといてよ、文藝春秋見たよ!って!」と伝言を頼まれたとのこと。おじいさんの特徴を聞くと、あMさんだな、とすぐにわかったのだが、なんだろう。 夕方荻窪の知り合い宅へ出張買い取り。ささま書店さんの前を通過。知り合い宅では、久し振りに開いた折りたたみコンテナの底にGOKIBURIの死骸を発見し、胸中で絶叫しながらなにもなかったようなふりをして処理。初めてのことだが、これも休業の産物かもしれない。 6月18日木曜日。 店員ノムが店番復帰。やっぱり店員さんはすごいなあと思う。ぼくと違って実行力があって、本の山を動かす。 シャッター業者さんに正式に修理を発注。色のサンプルを見れますか、とFAXに書いたら1時間後には持ってきてくれて驚く。 夜、いとこのAちゃんが自宅の片付け中、古いVHSに祖父と父が映っているのを発見なさり、限定公開でYOUTUBEにアップしてくださった映像を観る。ある祝賀会の壇上スピーチで天気のことばかり言う祖父と、つまらなそうにうつむきがちな父。懐かしい。たくさんの肖像が映っているので限定を外すことはできなそう。 ニュースのアナウンサーが、「緊急事態宣言が解除され自粛が緩和、これで県外への移動が自由です。」と言う。あれ?強制されていない自粛が緩和されても「自由になる」ことはないはず。そもそも自粛は自由なはずなのに、と思う。 6月19日金曜日。 休業中のおっとりペースが抜けず、仕入れた商品を入れたオリコンを放ったらかす。次の買取りに必要なオリコンが無い、という現象。 大山3つと中山1つをミックスして一気に仕分け。市場準備。 夕方、店番TTが受けてメモで伝えてくれていた買取り以来先へ電話するも不通。何度も利用してくださっているお客様なので、その番号にショートメールも入れる。お返事が無いので数時間後改めて電話をかけると、まったく知らない方がお出になった。「違います」。TTのうっかりメモミスなのだった。 夜、名画座手帳編集部の朝さんと井上さんが立ち寄ってくださり、流れで名画座手帳2021の会議になる。いただきものの缶ビールが空いていく。ああこれこれ、店が始まったな、と想う。 午後、用が済んだらすぐ折り返します、と言っていた古書組合事務のIさんからの折り返しはやっぱり来なかった。やはりぼくは所属する組合から嫌われている業者なのだ。 6月20日土曜日。 久し振りの快晴。 開店からずっと昨日の続きの市場準備。年々本を縛るのが遅くなっていて、さんざん時間がかかったのに準備できたのは23本と2函。夕方市場に出品へ。 ノムが店番復帰してから3日連続でレジを締めた後の現金計算がぴったり合う。ぼくには奇跡に思える。 ノムが店番中、やはりMさんが来て、「文藝春秋見たよーってマスターに言っといてね!」と伝言を頼まれたそうだ。ほんとになんなのだろう。どんな誤解なのか。 深夜、眠れずにうっかりアマゾンプライムで再生した「スーサイド・スクワッド」を朝方まで観てしまう。 6月21日日曜日。 開店して諸事。 午後早く、近所の店番TTの本の片付けを手伝う。高くはないがニッチ&キャッチーな内容でとても面白い。オリコン10個を店に降ろす。 早めに帰宅してYOUTUBE徘徊などグダグダ。 最近ずっとゆらゆら帝国ばかり聴いている。まだ全アルバムを聴けていないので楽しみ。 夜、プレステ2で「かまいたちの夜2」を始める。
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by ouraiza
| 2020-06-22 21:53
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