陸閘    せと
 先月、金沢へ旅行した友人に、以前金沢に赴任していた兄からのお土産として食べて美味しくてもう一度、と願っていた「いしり」を買ってきてもらった。いしりは能登地方名産の魚醤。フィッシュソース。イカ風味の醤油。入手した2種のうち1種に「いしり」、1種に「いしる」とラベルにあり不思議に思って検索すると、「いしり」は原料がイカ、「いしる」はイワシや鯖など青魚、なのだそうだ。やはりとても美味しく、いっそ飲んでみようと思ってツーフィンガー分コップに注いだが、しょっぱ死にしそうな気がして止した。

 高田小跡地の公園作り。 ついに更地になった雑司が谷の高田小学校跡地。校庭が開放された日の夕方五時過ぎには監視する人もいなくなるので何度かキャッチボールをしたことがあった。公園化計画のページに載っている予定図にはなんと「ボールひろば」がある。嬉しい。しかし往々にしておじさんたちには利用できない規約だったりするので心配。

 7月2日月曜。昼まで休眠後に出勤。昨日お引き取りした落語関連ものを仕分け、市場準備。背表紙より中に入ったことのないまったく未踏の地なので詳しい友人に教えてもらいながら。ついでに番台前に半年以上放置されていた額類を整理。会津八一学規の色紙額をどうしようか悩んだが、なぜか相田みつお風書体で印刷されているので処分。それにしても「日々新面目あるべし」、難しいことだ。
 深夜、ワールドカップ日本対ベルギーを観戦して呆然とする。負けはしたが日本代表には新面目があった気がする。

 3日火曜。古本販売サイト「日本の古本屋」の即決注文システムにおける送料の設定に悩む。各運送会社のもろもろ複雑かつ流動的な配送料金に一件ずつのご注文をあてはめて右往左往するのがイヤなので、独自の一定送料を設定してしまいたい。
 ちょっとしたテレビの撮影。プロデューサーの方がずっとうちの店のことを「じゅうらいざ」と仰っていたので心配だったが、後にいただいたお電話で訂正のお願いをすることができた。
 深夜、ドラマ「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」を観始める。1話目の半分ほどのところで、これ一度観たな、と気付いたがまあいいか長瀬君だから。

 4日水曜。開店して諸事後、ツイッターや地下の更新。
 夕方病院へ父の見舞い。アイスの実ぶどう味、かりんとう、オレンジジュース。

 5日木曜。開店直後にいらっしゃったお客様がその時間に店員ノムと会合の約束があるとのことなのに、ノムが約束をうっかり忘れていて来ないのでぼくがベラベラ喋る。
 やっと気持ちの中で確定してきたネット販売における段階的一律送料の設定を閉店前までずっと。
 深夜、NHKオンデマンドにて「カーネーション」を観はじめ、泣く。

 6日金曜。やらねばならないとわかっている特殊なことが目前にあるのになぜか日常的な作業に埋没してしまうことってあるな、と思う。
 夕方から店の奥をつぶしている山脈を削って外のガレージに運び出して市場準備。大判は先週終わったのでA5判を。全然終わらず。

 7日土曜。撮影があるので昨日一旦奥にしまいこんだ山脈の一部を開店前に外ガレージへ運び出す。束80本。2000冊ほど。
 背が高い、本がお好きな女優さん。お会計の際、棚のかなり上の方に飾っていた商品を番台へ置かれたのでびっくり。
 夕方からガレージにて市場準備。こういう時いつも閉店の22時に間に合わず綿々と作業を続け、例えば0時に作業が終わったとしても、翌日開店するための作業の痕跡の片付けを一人でグダグダやるので結局2時くらいまで店にいることになる。そこで今回は作業を途中で中断、店員ノムに片付けを手伝ってもらう作戦を実行し、うまくいった。片付けを一人でやらないのは楽で嬉しい。

 8日日曜。断続的に買い取りにお呼びくださっていたお客様宅へ、建物解体前最後のお伺い。ブツを車で2往復。数回お伺いしただけの一片付け業者ですが、知性とユーモアと歴史が染み込んだ一軒の木造住居で、とても勉強になりました。詮無きことながら、淋しい。店史上ベストな軽さと高さの脚立を記念にいただく。
 夜、目白を散歩して営業時間外の中村彝アトリエ記念館を外から眺める。
 ニュースに「長良川の陸閘が封鎖」とあり、その漢字の読み方がわからないのと同時にもしやと思い検索すると、数年前岐阜へ旅行したときに徒然舎さんに案内してもらいつつ散歩した長良川の岸近くにあったあの門のことを「陸閘(りくこう)」と言うのだと知った。あの時は冗談めかして「えーこの門閉まるのマジで〜」「そうとうヤバイね〜」という感じだった。しかし岐阜の印象として強く胸に残っている景色。それが大雨で長良川が増水、14年ぶりに閉まったのだ。徒然舎さんたちのツイッターで定点ライブカメラがあると知り、閉じられた陸閘が仕事をすることが無いよう祈りながらじっと見る。

 9日月曜。cahierはえーとカイエ、、、、など、主にフランス語だが、字面を見て内容を想像するのに時間がかかり手が止まってしまうので、外国語がぼくよりは得意な店番のノムに洋書を担当してもらって市場準備。
 夜、サン浜名で慰労会中、突然背中に水滴のノックを受け、クーラーの結露かと思って上を見上げてもクーラーは無く、換気扇の上の天井から水が滲み出てついに水滴となり勢いを増しながら降ってくるのが見えた。ご主人が2階のサン浜名中華部門へ確認に行かれその報告によると、古い蛇口が折れて水が噴出している、とのことだった。面白かった。
 サン浜名のご主人はお店のすぐ近くで行われた「池袋ウェストゲートパーク」の撮影期間中に長瀬智也さんを見たそうだ。

 10日火曜。しばらく放心して後ひたすら市場準備。夕方から出品へ。A5判が終わってホッとした。

 11日水曜。しばらく放心して連絡事項とメール数件。
 日曜日にお引き取りした家具類を拭く。タバコのヤニと経年のホコリが激落ちくんによって剥けるように落ちて、やっぱ激落ちくんすげー、となる。マジックリンとのタッグが最強だった。

 12日木曜。しばらく触れず溜まっていた小山をミックスして方向付け、一部値段つけ。
 小、中規模の家具類に適当な値段をつける。
 鳥料理居酒屋サンダーバードにて酢入りレモンサワー。

 13日金曜。小山を方向付け、値段付け。
 午後からひたすら店内奥の山脈を削ってガレージに運び出し、四六判の市場準備。松坂が先発するオールスターを観たかったが帰れず。着ていたライオンズ森友哉Tシャツの全面に汗の塩分でできた白い波紋が柄のように浮かび上がり、やっと本を車に積んで駐車場に戻ったとき、森友哉選手がMVPを獲得したとカーラジオで知った。
 
 14日土曜。市場準備の続き。
 夕方に出品へ。四六判が終了。店内奥に積み上げた山脈のうち文庫と新書を棚の裏に隠し、ついに片付けることができた。
 暑い日が続き、明治通りを歩くと、前方の景色が蜃気楼で揺らいでいた。

 15日日曜。近所の鬼子母神堂と大鳥神社で手創り市が開かれる賑やかな雑司が谷サンデイ。細かなブツ類を外に出すのと同時に家具類をガレージに並べる。猛暑でタイミングが悪い。
 何も言わず番台から見えないところで携帯電話を使い店内画像を撮影する人が特に週末に増えていて気になってしまう。一言声をかけてくれればレジの中身でも薄い頭頂部でも撮影をOKするのに。そういう方を見かけ、「ひと声かけてください」とお願いする都度、ぼくが常識と感じていることのほうが間違っているのではないかと悩む。具体的に困ることがあるわけではないので結局気分の問題なのだが。
 寝不足で朦朧、早めに帰宅し、高校生のころにとびきりのエロ本を開いた背徳感を思い出しながらドミノピザの「ウルトラ盛 4倍!チーズ」を注文、ワールドカップ決勝戦をテレビに映しながら白目をむいてむさぼった。
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by ouraiza | 2018-07-25 02:10 | Comments(0)
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