港    せと
 4月28日土曜。早朝の新幹線に乗るため5時に起床。料理番組で土井さんという方が白身魚のオムレツとマッシュルームの味噌汁を作っていて、なんと美味そうな、と目を覚ます。
 店に寄って荷物などを準備し駅に向かう道中、普段履きのクロックスから一張羅の靴に履き替えるのを忘れていることに気付いたが店に戻っている時間はなく諦める。去年仙台に行ったときと全く同じミス。夜勤明けの宮本くんと大宮駅で合流。
 ブックオフで買ったレイバンでキメて久しぶりの仙台でびしっといこうと、サングラスをかけることに挑戦していたが、なんだかかっこつけてる心性が自分で耐えられなくなってきて途中で放擲。慣れるのは難しそうだ。

 行ったことのなかった、いや、去年コボスタジアムには行った、仙台の東側の、若林区新寺という地域で開催されている「新寺こみち市」に出店なさっているブックカフェ火星の庭さんのお手伝い。火星の庭さんが参加なさっているBook! Book! Sendaiというイベントが10周年を迎え、今年は毎月開催されている「新寺こみち市」の一角で祝賀的に開催されるという趣旨。
 東側というのが新鮮でもっといろいろ歩いてみたいと思う。持っていった仙台周辺関連紙モノでは塩釜が人気だった。郷土史に興味をお持ちのお客様たちが戦前の絵葉書やパンフを手にいろいろ熱心に教えてくださる。塩釜の埋め立てのこと。仙台駅前にあった仙台ホテルや芭蕉の辻のこと。春の陽がさす気持ちのよい午後に、とても愉しい時間だった。水を買いに自動販売機を目指してふと会場から抜けると、道端に見たこともない大輪のタンポポが咲いていた。

 29日日曜。昼、昨晩の打ち上げで飲み過ぎはしゃいだことによる内向的呪詛が漏れ出ぬよう奥歯を抑えながら(「死にたい」発言1回100円という賭けをムトさんとする)、仙台駅横の展望テラスから仙台の西と東を見る。太白山の突出感すげぇと思いながら二日酔いが気持ち悪くテラスの端のベンチで寝る。

 仙台で運営されている伊達バイクというレンタサイクルシステムで移動をしようとその集積所に行ってみたが、登録にはスマホでなんらかの操作が必要なようで、バッテリーが10分も保たないスマホでは無理だと諦める。
 火星の庭さんにてセイロンカレーとバナココシェイクで癒されてから、元往来座店員のうすだ王子を訪ねて遊ぶ。すぐ近くを何度も通過していたのに知らなかった「花京院(かきょういん)」という地域を歩くことができた。
 前日からずっと付き合ってくれている仙台の新派美術系ネット(実は店あり)古書店、古書水の森さんの、歪んだ自意識の軋みから滲み出た眩惑のバイブスに撃たれ続ける。その水ちゃんからDJ機材、ミキサーの「ウーレイ」について教えてもらう。さっぱりわからなかったけど欲しい。

 うすだ王子の風通しのいい空間の作り方や、打ち上げで聞いたアブクマさんのご商売のお話、水の森さんの偏執的写真集の店、火星の庭さんの破顔と懊悩などに触れ、古本屋ってもっと広々とした感覚で自由にやっていいんだな、と勇気をもらう。
 夜、ぶ厚い焼肉は焼け具合が視えない、と知る。

 30日月曜。仙台で必ず食事する立喰い寿司店のシャリが若干小さく細くなっているように思う、と言うと、「羽生結弦クンが細いからだろ、シャリのユヅ化じゃん」と同行していたムトさんが興味なさげに言った。確かに仙台では羽生さんの祝賀パレードがちょうど一週間前にあったばかりだ。

 とりあえず仙台港の端から海を眺めることを目指して仙石線に乗り、中野栄駅から散歩。なんとなく潮を含んだ空気を感じながら、3年前に仙台から塩釜まで約6時間かけて歩いた宮本くんに見覚えの有無などを尋ねる。三井アウトレットモールを通過して観覧車に乗り、仙台港中央公園の山頂で休む。観覧車からの眺めでうすうす気付き始めていたが、仙台港は「港」ということばから脳天気な観光者が安易に連想していたいわゆる「漁港」ではなかった。「港の種類」によると日本に18箇所ある「国際拠点港湾」の一つで、大企業の倉庫なのか運輸の拠点なのか、広い敷地がそれぞれ鉄柵で仕切られ、その横を大きなトラックが走っている。カモメの声をコーラスに、海原に遠い目を向けシッティンオンザドックオブザベイ、という環境ではなかったが、一箇所作業中のタンカーの横で釣り人たちがヒップホップを聴きながら釣りをしているスポットを見つけそこに佇み、海気分をかなり片付けることができた。
 祝日だからかたくさんの釣り人で賑わっていた公園の釣りスポットでふと尋ねると、釣れるのはアイナメ、イワシ、シャコ、他失念。釣果が確実にありそうな手応えのある雰囲気が漂っていた。おばあちゃんが恐る恐る竿を上げ、糸の先にぶらさがる小さなイワシをおじいちゃんがひやかし、お孫さんが竿を上げるおばあちゃんを手伝う。

 目的の一つだった、路上のカケラ拾い、も成果があった。赤錆のボルト、ナット、ワッシャー、クギなど。歩道の植樹帯にネコジャラシが群生しているが、ベルベットような手触りの、密で重量感のある、初めて見る種類のネコジャラシだった。ネコジャラシではないのかもしれない。後に調べたのだがわからない。
 散歩道と言うよりはトラックの行き交う車道だが、時間切れで行けなかった港の東端にいつか行ってみたい。
 帰りの仙石線車内でスマホを立ち上げ、仙台港周辺のの7年前の被災状況を検索し言葉をなくす。さっき缶チューハイ片手にふらふらしたばかりの、午後の光を浴び子供たちがバーゲン台の周りを走り、カップルや家族連れで賑わうアウトレットモール。

 夕方から火星の庭前野さんと古書水の森の水ちゃんたちと仙台駅近くで再び乾杯。前野さんが水ちゃんが着ていた自称GUCCIの白いパーカーに黒ビールをぶちまけ、トイレの水道で洗う。タバコを吸いに外の喫煙所へ行こうと席を立ったとき、水ちゃんの白いシャツにもビールの黒い染みが浸透しているのが見えたが黙っていることにする。駅前まで見送ってくれたユヅ化している前野さんとびしょ濡れのパーカーを着た水ちゃんとハグ。2時間半後には蒸し暑い池袋にいた。
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by ouraiza | 2018-05-12 03:23 | Comments(0)
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