電柱
電柱_f0035084_120794.jpgこのところずっと佐伯一麦さんの小説を読みました。電気工時代が舞台の『一輪』(福武書店)『ショート・サーキット』(福武書店・講談社文芸文庫)と発病後故郷仙台に戻り自然のなかで暮らす『無事の日』(集英社)。都会を離れ仙台を舞台にしたものが電気工時代の危うさとどうつながっていくのか、と思いきや、一見たんたんとした日常から滲む危うさはなんだか余計恐ろしく、『ア・ルース・ボーイ』が年齢を重ねた『無事の日』、すごくよかったです。『ショート・サーキット』からとても興味深かった電柱を建てる場面。

「背丈ほどの長さの二本の柄の先に細長い刃がついている健柱用のスコップを、かれは力まかせに地面に突き刺した。そうして柄を開いて刃先を合わせ、円柱形になったふたつの刃のなかに土をためるようにしてすくった。普通のスコップでは径の小さい穴を掘ることができなかった。細いコンクリート柱の径よりもわずかに大きいだけの穴を一メートルの深さに掘る。テーパーになっているだけ、奥になるにしたがって径が大きくなっていく穴を掘らなければならなかった。」

いやはや、電柱は野草のように勝手に道路から生えてくるものではなく・・・感じることのとても多い小説でした。
せと
by ouraiza | 2006-08-03 01:20 | Comments(0)
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