絵心本3 灯火管制
+++本はある瞬間、画用紙にもなる。本に無造作に描かれた落書きは、日常生活にくいこんだ本と人とのたくましい交わりを、思い起こさせます。+++絵心本3 灯火管制_f0035084_23201327.jpg
 『柳瀬留治歌集 立山』昭和18年、朋文堂。入荷したときから表紙本体からはずれカバー各所破損、裏側半分無し、うぬぬ商品化は無理かな、と思いつつ表紙を繰るとなんとも絵心。細めの多分万年筆。刊行当時の持ち主の作品だとしたら(少なくとも1度古書店を経由した形跡あり)、昭和18年ある夜、ウォオオーンと空襲警報、読んでいたこの本をいったんぱたりと閉じ急いで裸電球を消す。ん、電球ってこんなだったっけ、手近な表紙を開き闇の中でペンをとる。発電について思いを馳せたのかもしれません。SとNの動力作動中な磁石、生きているようです。
せと絵心本3 灯火管制_f0035084_23203458.jpg
窪田空穂の序文より
~柳瀬君は、昔からの登山好きの一人で、好んで高山に登り、山の話を豊富にもつてゐる人でもある。~柳瀬君といふ人は、本来深い詩情をもつた人である。同時に一方には、可なり粗野なところももつてゐる。この詩情と粗野とは、時にはいみじく調和することもあり、時には反対に破綻を示すこともある。~

本文より2首
焚火跡一つ巌(いはほ)に遡行年月(そかうねんげつ)記せるがあり嬉しくて泣かゆ
我がザツクに吊れるコツプがゲラゲラと笑へりといひおどおどとせる
by ouraiza | 2006-07-27 23:22 | 絵心本(終了) | Comments(5)
Commented by 栄 君子 at 2008-09-04 09:05
 留治はわたくしの大叔父にあたります。今回取り上げていただいて懐かしくお送りしました。今、このメールを開きましたのは、剣岳(2,999m)
を題材にした、木村大作監督の「剣岳点の記」の映画が昨年から2年がかりの撮影が終わり、来年度上映されますが、そのことに少し、叔父が関与しているのではないかと調べていたからでございます。物語の中に出てきます、山岳ガイド宇治長次郎との剣岳登山の句が2句ほどこの「立山」に載っていたのを見つけました。 新田次郎著「剣岳ー点の記」
Commented by ouraiza at 2008-09-05 13:51
栄君子様、コメント誠にありがとうございます。映画のことなど、ご教示ありがとうございます。偶然のこととはいえ、落書きをきっかけにした本にまつわる小さなつながりが面白く思われます。せと
Commented by 栄 君子 at 2009-03-12 23:36
 再び、お便りします。私は、大変な勘違いをしておりました。実は、この落書きを以前見ていました。「ああ、これならうちにもある。」大叔父の蔵書が何冊か家にありましたのでその中にあるのだ、と思っていたのです。でも、印刷ではない落書きが複数冊あるわけがありません。実際、手元の蔵書をいくら調べてもこの落書きのものはないのです。では、なぜこの落書きに見覚えがあったのでしょう。つまり、この実物を以前実際に見ていたのです。これは、ややこしくなりますが、私の叔父(大叔父の甥=父の弟=故丸山茂)の持ち物でした。叔父は数年前他界しましたがその際の本などを私の従兄たちが整理したものと思われます。この上なく懐かしいものをあなた様がお示しくださったのも、そしてわたくしが見つけましたのも、山を愛した叔父の私へのメッセージとも思われてなりません。
 まだ、お手元にありましたら、ぜひぜひお譲りいただきたいと思います。
アドレス sakae_kimiko@ybb.ne.jp
Commented by 栄 君子 at 2009-03-13 11:44
 前略 上記、古書を購入したく思います。インターネット上で購入を試みるのですが、こちらの技術の稚拙なのと、パスワードが分からずうまくいきません。これをもって、注文できますか?
Commented by ouraiza at 2009-03-13 16:04
栄様 お電話ありがとうございました。思い出深き本であるのと同時にその実物であったとは、その神秘に驚きます。すでに在庫がなく残念ですが、1冊の本の歴史が持つ奥深さを目の当たりにいたしました。誠にありがとうございました。せと
<< 河馬・梨・薔薇 0 >>