スーパーマーケットかどやさんの角にたばこの自販機があるのだが、ここで、ここ5年で2回、小銭をなくした。急いでいる時など、取り出し口から小銭を出そうとして指が小銭をうまく挟めないことがある。そしてこの、釣り銭取り出し口と側溝の穴との絶妙な関係。
川のほとりでうたたねをしていたたかしが飛び起きた。「いたた・・・」。どうしたのだ。たかしの急な訴えに驚き、父は川面から目を離し振り返った。父さん、なにかが空から落ちて来て鼻の横にぶつかったようなのだ。なに?落ちてきたものとはこれか。丸く薄い、100と刻印のある銀色の小石だ。そうか、この河原にはしょちゅう小石が落ちてくるとは聞いていた、ははは、でかしたぞたかし、ちょうど釣り糸におもりが必要だったのだ。父さん、釣り糸に通すならこっちのほうがよさそうだ。たかしの手のひらには鼻の横から流れた血をぬぐった赤い形跡と、すぐ近くで拾った、真ん中に穴の開いているやはり銀色の小石がのっている。そうか、こっちには50とあるな、穴があって糸を通すのに便利だ、これをたくさん集めれば、釣りをするときのおもりにはことかかぬ。たかしは一度も魚を釣ったことがないのに釣りを毎日続けている父の手伝いができたような心持ちで、うれしかった。でも父さん、おもりがあってもエサがなくちゃいけないのでは。そうか、ではたかし、もう一度あそこで昼寝をなさい、そういうものが降ってくるかもしれない。
たかしと父は空を見上げた。