『聞いてくれ みんな 起重機を動かす手で書いた生活ノート』島田武雄編 麥書房 昭和35年初版
今週のシネみち ◎◎『宗方姉妹』'50新東宝(小津安二郎監督 高峰秀子 田中絹代 山村聡 上原謙 笠智衆) ◎『小早川家の秋』'61宝塚映画(小津安二郎監督 中村鴈治郎 原節子 小林桂樹 新珠三千代 加東大介 浪花千栄子 森繁久彌)以上@神保町シアター ◎◎『最後の忠臣蔵』'10ワーナー・ブラザーズ(杉田成道監督 役所広司 佐藤浩市 桜庭ななみ 安田成美 片岡仁左衛門 田中邦衛)@板橋サティ ◎◎◎『ハーブ&ドロシー』'08米(佐々木芽生監督)@渋谷イメージフォーラム 『宗方姉妹』デコちゃんのコメディエンヌぶりに脱帽。たまらないほどキュート。デコちゃんが新しい時代の先進的な妹役、絹代が旧い時代を尊ぶ対照的な姉役。山村聡が、戦争で仕事を失い終戦後も職にありつけずすっかりいじけくさった絹代の夫を好演。絹代を7回殴った。メインにあるテーマは暗いものだが、デコちゃんの明るさや、猫たちの姿で和む。エンディングも「えーっ、なんで〜?!」と思うけれど、その割に観後感は悪くない。 『小早川家の秋』森繁久彌が出て来る唯一の小津映画。この辺りのエピソードをちらりほらり読んだり聞いたりしていたため、ちょっとドキドキしたが、そこまでのテンションは感じずホッとする。出番もそんなにないし。自分の好きな他の小津映画(『麥秋』『東京物語』)と比べるとそこまでの感動はなかったけれど、印象的なシーンもいくつかあった。原節子と司葉子の立ち座りが寸分も違わないところなど、気持ちが悪いほど、小津だなぁという感じ。新珠三千代がよかった。鴈治郎の愛人役の浪花千栄子もちょっと艶っぽくてよかった。 『最後の忠臣蔵』CSで初日の舞台挨拶を観て泣いてしまった。のでこれは観るしかない、と次の日観た。ちょっと狙い過ぎだろう、とか、音楽がベタ(素晴らしいのだが)で繰り返されるフレーズにしつこさを感じたりしたものの、やはり泣いてしまうし、紅葉や竹藪のシーンは本当にうっとりするほど美しい。役所広司もさすがの演技だったが、佐藤浩市が素晴らしかった。桜庭ななみは初々しくて、一生懸命感が出ていて好感が持てた。あの舞台挨拶をみてしまった後では悪くは言えませんて。役所広司の役は、『十三人の刺客』の役より適役だったように思う。エンドクレジット、メインキャストの後、結構上の方に『どこかで誰かが見ていてくれる 日本一の斬られ役』の福本清三の名前が。どれがそうだったのかわからなくてくやしかったけれど、調べてみたら吉良上野介役であった。自分がなれと言われると困るが、武士ってカッコいい。 『ハーブ&ドロシー』いやー、本年度ベストスリーです。間違いなく。NY在住の日本人女性監督によるドキュメンタリーの傑作。マンハッタンの小さなアパートに住む老夫婦。慎ましい暮しを送りながら、40年間の結婚生活の中でこつこつと集めたアメリカの近代アート作品、約4200点。心からアートを愛し、アーティストを尊敬し、作品を愛でる。何と素晴らしい文化との付き合い方だろう。この二人こそ本物の「コレクター」だと思う。何であれ(もちろん本も)、「蒐集」気のある人、それに「コレクター」を相手に商売する人(もちろん古本屋も)、すべての人に是非観てほしい。テーマ、対象、撮影、アートディレクション、音楽、全てにおいて完璧な作品。主人公のあまりの可愛さに笑みがこぼれ、彼らのアートに対する愛情に感動して涙ぐむ。アートがらみだけではなく、理想的なパートナーのあり方という意味でも深く考えさせられた。この佐々木芽生監督、続編の『ハーブ&ドロシー 50X50』を撮影中とのことで、もう本当に今から楽しみ。 まだ一週間ほど残っていますが、今日が今年最後の担当ということで・・・・・ 今年のシネみち 総数304本(漏れもしくは数え間違いで若干の誤差はあるかも) 以下ベストテン(鑑賞順、順位なし、()内は監督) 『砂の女』(勅使河原宏) 『血と砂』(岡本喜八) 『エレキの若大将』(岩内克己) 『青空娘』(増村保造) 『麥秋』(小津安二郎) 『母三人』(久松静児) 『どですかでん』(黒澤明) 『どっこい生きてる』(今井正) 『晴曇』(野村芳亭) 『ハーブ&ドロシー』(佐々木芽生) 去年もそうだったけれど、この作業かなり苦しいです。ウンウン悩みます。 ちなみにとりあえずベスト候補を書き出してみると、36本ありました。 まったくの偶然ながら、10作品全て監督が違うという事実に我ながら感心。 どうしても最近観た作品の方が印象が残っているのと、名作傑作と言われている作品でそれを納得した作品よりも、全く知らずに観てそれが良い作品だったりすると、そっちの方がポイントが高くなってしまったり。難しいもんです。 来年はもう少し洋画にも手を出していきたいなぁ。 閉めみち!
by ouraiza
| 2010-12-26 05:11
| ノミムメモ(土曜)
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Comments(2)
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by
映画の神
at 2010-12-26 06:38
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のむsun、今年も映画を沢山観て頂きありがとうございました。
bestに選ばれ、近くで喜八も喜んでいます。 ぃよッ!映画女ッ! 2011もよろしくお願いしますby映画の神
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のむsun
at 2010-12-26 15:39
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映画の神様、
わ!嬉しい、神様ありがとうございます。 そうですか、喜八っつぁんそちらで喜んでくださってますか。 映画女、Lady Gaga ならぬ Lady Eiga ですね。 こちらこそ来年も神様のご期待に添えるよう精進いたしますー。 願わくば・・・鶴田浩二様も近くにいらっしゃるようでしたら、愛していますとお伝えください。
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