新入荷
フジ子・ヘミング 運命の力 H14年 840円 発売中! 「人生の艱難辛苦から逃れる道はふたつある。音楽と猫だ」(p.34) 「楽屋からステージにむかうのは、地獄へ行くときのよう。ガクガク足が震えて」(p.20) フジ子・ヘミングの半生が豊富な写真とともに語られた素敵な1冊。 貧しさに苦労した時代や親への思い、音楽に対しての言葉も興味深いですが、 彼女が刺繍したジャケットや普段の暮しを色どる雑貨たちの写真も目を奪われるほど美しい。 厳しい美学と現実への力を併せ持つ凛とした方という印象を持ちました。 ---------------------------------------------------------------------------- このブログの私担当のカテゴリ名は「ふらふら散歩」なのに、ここ数ヶ月、 家と職場の往復ばかりでめっきり余暇に外を歩かなくなっていました。 人とも最低限しか会わず、もっぱら自宅で引籠もり。 対人関係のみならず、文字をつむいで言葉を出す気も起こらなくて、「往来座通信」もからっきし。 とうとうこないだ代表せとさんからつけられたかわいくて可哀相なあだ名が「かきかけなつき」。 ちゃんと過去の記事も今度完成させますすみません。 そんな薄暗い生活から、久しぶりに刺激のある日々が、少し戻ってきた気がします。 北浦和の埼玉県立近代美術館に「ロシアの夢 1917-1937」展を魚月の相方みきさんと見に行きました。 この美術館は10代のころ何度か通っていて、個人的に思いが強い場所。小村雪岱の名を知ったのもここの常設展だったと思う。 駅から降りた風景とか、建物の外観を見るなり記憶がわっと甦って、 高校生のあの頃、何か知識とか美しいものに強く飢えていた(今とは違う)自分を思い出した。 展示は、ロシア革命以降ほんの数十年間ロシアで力強く盛り上がった「ロシア・アヴァンギャルド」という運動で生みだされた 様々な芸術分野のものたちが見られました。舞台、映画、ポスター、洋服、食器、建築デザイン、絵本に写真雑誌エトセトラ。 社会主義革命、国家の意思が大いに反映されていて、キャッチコピーも勇ましく、どれも使われている色彩やフォント、 構図や印刷は素晴らしいのに、ただきゃあきゃあと楽しむだけでは済まされない、思想の重みとか時代背景をひしひしと感じました。 実際には建設されなかった、タトリンの設計した「第三インターナショナル記念塔」のCG映像とか 鎌や稲穂、糸巻きといった象徴を笑えるほど可愛くデザインしたテキスタイル、そしてやっぱり書籍類に目が行きました。 しかし、壁には沢山の解説がついてたにも関わらず、この辺の世界史知識はぼんやりもいいところで 勃興から華々しい隆盛、そして締め付けが厳しくなっていく後半期、作品の表情は確かに移り変わっていくのに それを正確に読み取れた自信は無く、今回はうっすら理解できたに留まる。これを機に色々読んでみよう。 いったん園内の広い公園を満喫して、もう一度戻って常設展も見て(草間彌生のトランク!)、上の階の美術書専門図書館も居座った。 そして仕上げに予め場所を調べてあった近くのブックオフへ。いつものように2時間あまりフラフラになりながら選書して、 帰る前にちょっと休もうと、互いに大きい荷物を抱えて駅前を徘徊。 21時を過ぎ人も少ない真っ暗な商店街をふたり吸い込まれるように歩き進む。何度も引き返そうと思うたびに 黒猫や銭湯の灯に目を奪われ、たまたま歩き着いた先に、その店はあった。 木造の古そうな建物。珈琲の文字はあるも、外からは何だかよくわからない。楽しそうな雰囲気は窓から垣間見える。 数分迷ったものの、なんかどうしても気になってドアを押した。今思うと、あそこで勇気出してほんとうに良かった。 荻窪にあった「ひなぎく」を数倍男くさくした感じの内装、雰囲気。細長い一階にはカウンターと小さなテーブル。 よい意味でオシャレすぎず、アンティークの家具や古道具があちこちにあり、オレンジ色の照明が暖かい。 まず目を奪われたのが壁の棚に並ぶ沢山の古本。純文学から社会運動、写真集、マンガも杉浦茂からデトロイトメタルシティまで。 常連のおじさんたちがなごみ笑い、ウェールズから来たという年配の白人紳士はギターをつまびく。 いつも来てる地元の人が多そうだけど、かといって居づらい気分にはならない。彼らに色々話しかけてもらい、果てはお菓子までご馳走になった。 マスターは寡黙で親切、メニューも安くて種類も多い。 直角のような急な階段を上がった先には、想像以上に広い二階。たぶんどこを撮っても絵になりそうで、カメラを持ってこなかったことをくやんだ。 隅にあったDVDファイルのラインナップは、自分が分かるだけでも「新宿泥棒日記」とか「オートバイ少女」、 壁に貼られた紙によると、過去にここで上映された作品名も溝口健二にシュバンクマイエル。(その他にもびっしり書いてあった。) 文化的な香りと、庶民的な気楽さが奇跡的にいい塩梅なのだ。 ほのかな電球に照らされたテーブルでみきさんとふたり、何度も「夢みたいだね、夢みたい」と顔を合わせながら、瓶ビールと納豆ピラフを味わった。 家に帰ってからも、興奮してなかなか寝られなかった。 その日一日目にしたものと、何より最後の喫茶酒場のショックが大きくて。 理想に近い店のあり方、そしてそれが北浦和という意外な場所にあったということ。 たぶんこれから、通うことになると思う。遠いかな、難しいかな、それでも。 もっと歩こう。ドアを開けよう。たぶん今の自分にはそれが必要。すごく必要。 -------------------------------------------------------------------------------------------- 先日の雨の日、文芸批評のコーナーを思い切り整理しました。店としてもずっと懸案だったのに加え、今の自分にはこのあたりの知識が本当に必要で。 これまでは著名な人物の本があちらこちらにガッとまとまっていてその隙間を色々な本が埋めているという、秩序があるようなないような不安げな、 でも分かる方には分かるであろう並び方だったのを一新して 「辞典・年表・叢書など総記」「批評家あいうえお順」「古書・蒐集」「編集(者)」「出版(社)」「印刷」「図書館」というジャンルに分類。 誰もいない静かな店内で、夜更けまでひとりでずっと、ひたすら本を出しては、調べ、分け、棚に入れなおしてはずらしたり。 人によっては文芸評論家か編集者か分けにくかったり、そもそも勉強不足で何の人か分からないものも多く、作業は難航。前店舗時代の古い本も出てくる出てくる。 ちなみにあいうえお順に直すにあたり、饗庭孝男、百目鬼恭三郎あたりが難読でした。 終わってみると一見何も無かったかのように静かな佇まいのその場所ですが、 翌日さっそく常連のSさんが「なんか違うと思った」と数点そこの本をお買い上げ下さったのが報われた思いでした。 最近仕事をご一緒したある方が、カップ酒のグラスコレクターである事が分かり、 その分野は前から気になっていたので超興味津々で質問ぜめに。 すると後日、以前和歌山で入手したというコアラのカップ酒(菊花天長)を下さった。 何故か野球したり踊ったりしているコアラ。可愛い。 私も他柄を数点持っているのですが、これを機に本格的に集め始めてしまいそうです。 ただ問題は、ワンカップの味があまり好きではないということ…。飲み干せ! 先週の記事を見たふぉっくす舎NEGIさんが、なななんとナイトスクープのDVDを店に持ってきて下さいました。 特に見たかった「カーネル・サンダースを救出せよ!」の回、越前屋俵太や槍魔栗三助(生瀬勝久)といった昔の探偵、 まだ髪がふさふさな小枝師匠、昔の会場セットなどなど眼福です。おかげで週末が楽しゅうございました。ありがとうございました! なつき
by ouraiza
| 2009-11-16 18:46
| ふらふら散歩(終了)
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