―――どうして靴が落ちているのだろう。身元不明の靴をみつけると、靴をみやげに置いていった所有者が降りた真っ暗い穴の中が、気になって仕方ない。迷い靴は、町の脂汗の量を計るバロメーターなのかもしれない。―――
池袋のなかでも特に人通りが多く繁華な場所に迷い靴があった。サンシャイン通り入口近く、カラオケ屋、ドンキホーテ、ビックカメラ、パチンコ屋に囲まれたパピパピスポットに溶け込んだ逸品。片方の内部には桃色のビラが丸めてぎゅうぎゅうに詰め込まれている。酩酊バンザイ系であろうがそれがふさわしすぎる舞台において、悲哀が先に募る。「美人喫茶に美人はいない」という格言にならい、繁華街に繁華はあるのかという問いをこの靴は抱えている気がする。
せと