新年さいしょのシフトの日、帳場でしごとをしていると、楽器ケースを抱えたお客さまに声をかけられた。「じつは夏頃にこちらでコレを買った者なのですが……」
ケースを開けるとそこにはヴァイオリン。夏頃に当店の外に2000円で売りに出してあったというのだが、はてこんなキレイなものあったかしら、うっすら記憶にあるものとはずいぶんと様子がちがう。
プロの音楽関係であるもののヴァイオリンは趣味で始めたばかりというタイミングで見かけ、まぁ2000円なら後悔もないだろうと買っていかれたこの楽器。古本屋で2000円のヴァイオリンだなんてと当初は師匠にも笑われたけれど、何だか感触はわるくない。なんとなく気になるので紹介された修理業者に持ち込んでキレイにしてもらい、一部の部品を入れ替えたたらすっかり見違えてしまった。大量生産品ではあるものの時代がよいらしく、「最低でも40万」という代物だとのこと。その修理業社や音楽仲間のあいだで「古本屋で2000円のヴァイオリン」の話はすっかり知れ渡ってしまいました、とわざわざご報告に来てくださったのでした。
たいくつ