以前からそういうことがあるな、と思っていたことを、先日古本屋仲間にふと話の流れで訊いてみた。彼は、そういうことがある、と言う。やはりとうれしくなった。
閉店後の明りを減らした暗い店内とか、営業中でもお客さんのいないちょっとした隙間に、すっと本棚の裏に消えていく影を感じることがある。背後だったり、自分の横のほうから眼の端に入ることもある。現実に眼に見えたことは無い。
シャドーさんが現れても、怖い感じはまったく無い。シャドーさんがいることがなんだか当然のような気がしていて、じわりと親密感を持つことすらある。大抵はただ、そうか、と思う。本屋に限らずなにか店であれば、店員さんはシャドーさんに気付いたことがあるのではないか。
長く集中してなにかの作業をした後などの時間の切れ目に、よくシャドーさんと逢う気がする。店番用の意識と個人的な意識の谷間が関係しているかもしれない。あれ、と振り返り確認しに行っても、もちろんいつもの煮え切らない片隅があるだけだ。
『トリロー歌集』1~4巻 三木鶏郎 昭和32・33年
有限会社音楽工房 各30頁前後の冊子 4冊1括
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