WAS    せと
3月4日月曜日。
 午後遅めから最近の手作業不足を補うべく無約束営業はせず店内籠城作戦。

・W=Water(地下のどこかで水道管から漏水して毎月2万円ほど通常より水道料金が高く、さらに毎月増加している問題)。
・A=Airconditioner(店内に2台あるエアコンがスイッチすら入らない故障状態にある問題)。
・S=Shatter(店の外壁に設置されているシャッター4枚のうち1枚が完全に動かず、他もいつ動かなくなってもおかしくない問題)。
 細かく見れば他に・T=Tent(テントの布地が経年劣化ですぐにでも裂けそうな問題)・C=Car(愛車八号がそろそろ車検を通過できなそうな問題)などが挙げられはするが、ひとまず喫緊の3つを「WAS問題」と総称することで気分を軽くして前向きに取り組もうとしており、「A」に関する懸念だった連絡事項を息を詰まらせながら終わらせる。多分通常の経営者さんが30分で終わらせる作業をぼくは10日ほどかけている、と情けなく不思議。

 ハヤカワ文庫『Uボート』上下巻のうちの下巻だけを探していらっしゃったご近所の80代男性に、普段はしないがご事情によってはお手伝いする通販取り寄せによって到着した下巻をご購入いただいた。あまりにも面白く上巻を読み終わりなんとしてでも下巻に続きたかったが新刊では在庫無し、インターネットも縁遠い、というご高齢のかたで、いかに『Uボート』という小説と映画が魅力的で素晴らしいかをお聞きした。ドイツの戦争もののほうが日本のものより断然面白いとのことだった。本に埋没する時間を過ごしている人がいる、という抜き差しならない現実をお客様からはっきり教わることがある。

 海外文芸系中山の値段つけに集中。

 閉店後、ご近所のSさんと店員ノムと、普段は率先して食べない変わり種ラーメンを冒険して食べる会「アド麺チャー」を実施。池袋西口、ホタテ出汁ラーメンのNOODLE VOICEさんへ。なるほど、と思った。

3月5日火曜日。
 休み。有意義な休みにしようと念じてはいても家窟の沼から抜け出すための火種が湿っていて立てず、午後遅くやっと自分に立てと命じて食器洗いなどをする。雨が降り始めたが発起して夕方市場に出品へ。AヒロさんやA処さんにからかわれて楽しい。帰宅してまた茫然と天井やYouTubeを眺める。
 0時近く、雨中目白駅周辺まで散歩。

3月6日水曜日。
 休み。のうのうと家事や私事をしたりしなかったりし、夕方から約1年の島暮らしから帰ってきた友人Kくんの感慨を聞く会。北東池袋の中国西北家庭料理・沙漠之月さんにて。ご主人はモンゴルの少し南、甘粛省張掖市(かんしゅくしょうちょうえきし)という地の近くのご出身で、軽検索すると池袋から3460kmの距離。Kくんから池袋から1345km先の南方の島での暮らしぶりを聞きつつ、ときどきご主人が砂漠でのあれこれをお話しくださったり、想念が池袋の隅から遠方へ駆ける。丼内でつるつるのストレート麺がスープに絡まない問題。尋常ではない辛さの麻婆豆腐で頭から蝋燭が溶けるように汗が垂れ続ける。

 深夜、一旦休止していた2006年のドラマ「芋たこなんきん」鑑賞を再開。先代とともに切り盛りを続けた写真館が空襲で焼失してしまった父親が、敗戦後の年末に多分そのショックから寝込んで亡くなってしまうことがとてもあっさり軽く流されており不思議で寂しい。今はまだいいか、と再休止しようと思う。ドラマのモデルである田辺聖子さんの父親についての文言を軽検索で探してみると、当時の日記が2021年に発見され出版もされているという複数の記事があった。

3月7日木曜日。
 開店して諸事。急いで銀行業務を終わらせて、継続的に仕入れをさせていただいている事務所様へ出張買い取りお預かりへ。手動エレベーターがまだ現役で稼働している歴戦の倉庫から約40箱を車に積み込む。
 昨日までに店員TTが商品化を終わらせてくれている海外文芸系の中山を新入荷棚に配架。

 夜、いろいろ余裕のあるタイミングで事が運んだからだろうか、数年に一度あるかないかの、今日はいい日だ、という感覚が急に降ってきた。

 シャッターに鍵をかけて帰ろうとしてふと上空に見慣れない影があることに気がついた。明治通り向こう岸のビルとビルの間に看板なのだろうか、直方体の建造物があるように見える。それが今までそこにあったものなのか最近現れたものなのか全然わからないのだが、あれはなんだという違和感だけはある。好都合な視野の産物か。
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3月8日金曜日。
 鳥山明さん急逝のニュース。週刊少年ジャンプに夢中だったころの近所の公園の壊れかけたベンチの手触りや、小砂利が敷かれた地面にドッジボールの陣地を示す線を引いたつま先の摩擦する感覚を思い出す。同じフライパンの上でドラゴンボールの火に炙られその焦げ目を刺青として体のどこかに持っている世代。

 開店して諸事。
 先週末に入荷した映画パンフレットを商品化する。グーニーズ、グレムリン、ターミネーター、バック・トゥー・ザ・フーチャー、ゴースト・バスターズ、トップ・ガン、カクテル、霊幻道士、など、1980年代ハリウッド作品のパンフレットは、常時入荷してあぶれて売れないもの、売れないし買えない見切っているもの、だったのだが、1年ほど前に東京蚤の市という催事で岐阜・徒然舎さんのお手伝いをした時に、徒然舎さんの売り方が丁寧だったせいもあるのだろうが、それらがまさに飛ぶように売れている光景に遭遇し、ついに時代は周回してグーニーズがかっこいいものになったのだ、と判断基準の大きな変更に想いを馳せたのだった。おそるおそる、気張らない値段で配架してみることにした。
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 昨日お預かりしてきた約40箱を査定開始。内容が面白くて手が止まりがちで15箱ほど空けたところで時間切れ。

 夜、先月観た映画「ザ・マジックアワー」をもう一度観る。

3月9日土曜日。
 開店して諸事。
 昨日に続いて大山の査定、仕分けを一日中。複数のダンボール箱に渡って収納されているセットものが、ランダムに箱を開けているうちにだんだん揃ってくることに喜んだり諦めたり。早めに終われば縛って市場へ出品に行きたかったが閉店近くまでかかってしまい、車に積むだけに留まる。
 店員ノムが約20個の空いたダンボールを重ねて縛りゴミ収集所へ運び、やれやれやっと終わったぜ、と安堵していたが、昨日から風景の一部と化していた別の約20個の空きダンボール箱の存在に気付いて愕然としていた。さらに作業終了後、普段から間違ってプリントアウトしたコピー用紙は小さく切ってメモ用紙として利用しているのだが、店員ノムがその用途でメモサイズに紙を切っていたはずが、切り終わった紙片をきれいにまとめてゴミ箱に投げ入れたのだった。次の角を曲がれば春がある。

 週明けの旅行に備えて猫用と人用の備品をツルハドラッグで調達。

3月10日日曜日。
 開店して諸事。
 ここ数日で溜まったお持ち込み買い取りの小山をミックスして仕分け、商品化、配架。
 市場での委託販売の売り上げを受け取りに来てくださったお客様が手土産に「越乃寒梅」を持ってきてくださった。でかい瓶!と思った。
 番台に積みっぱなしていた文庫の大山を解いて仕分け、一部に値段つけ。

 WAS問題のうちの「A」(エアコン)の工事日が決定し、その事前周知のお知らせをプリントアウト。マンションエントランスの掲示板に貼り、上階住人のかたがたのポストに投函する。「WAS」がほんとに過去形のwasになってくれる日を待つ。

# by ouraiza | 2024-03-11 19:11 | Comments(0)
ctrl    せと
 ウィンドウズだと「コントロール(ctrl)」、マックだと「コマンド」というキーを押しながらのキーボードのショートカットという機能を、なんとなくパソコンを使っているうちに覚えていたのだが、初めて「ctrl」+「a」=全選択という技を友人から教えてもらいびっくりした。生まれた時からパソコンが当たり前にあった世代の人と同僚として働くとその体得具合の自然さに大きな差があることを感じる、と友人が言っていてとても腑に落ちた。

2月26日月曜日。
 定休日の無約束営業はせず休む。
 夕方から都営三田線蓮根駅へ。同行のムトさんの約35年前のある思い出を確認するために駅周辺をできるだけ隈なく歩く。個人が過ごしてきた時間と、とある街角に過ぎた時間、それを結びあわせる手がかりになるはずの蜃気楼のような記憶の風景に思いを馳せる。揺らめく場所を明瞭ではない記憶だけを頼りに探すことが現実的ではないとは思えない。そういう場所はたいてい見つかる。とは思いつつも今回は見つからず、セブンイレブンで缶ビールを買って飲む。
 ミヤモトくんと落ち合い、発行人ミヤモトくんがおすすめするお店で『月刊災難』創刊記念会。当初の目標だった中華太陽軒さんは満席で入れず、蕎麦のあさひさんと居酒屋巴さんにて。板橋区の未踏の路地の、熟年の素晴らしく居心地のいい2軒だった。巴さんではエンドレスで演歌が流れ、杯を空けるうちにだんだん細胞の呼吸が演歌調になっていく。ものごとを「好きな行為だ」とか「好きなものだ」とか判断することの嘘くささ、というか欺瞞というか、かんがえていきたいことだ。好きなものを見つけるべき、などとよく言ってしまう。
 志村三丁目から浮間舟渡駅へ新河岸川沿いを歩く。板橋区リバーサイド。新河岸橋と長後さくら橋は大きかった。ムトさんが撮影。後の軽検索結果だが、埼京線浮間舟渡駅 のホームは半分が板橋区で半分が北区、だった。
 造園職人でもあるミヤモトくんが、今年は沈丁花が咲くのが早い、と教えてくれた。
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2月27日火曜日。
 休み。
 猛烈な風。猛烈では足りない危険な風。2年に1度くらいはある気がするが、そういえばここ数年こんなに危険な風力は無かった。店番のTTから風対策についての悲痛なメッセージが来る。外に棚を出すことができないのでツノだけ出したカタツムリシフト、とのこと。

 夕方店に寄るとやはり外の棚を一つ倒してしまったらしく、後付け工作で最上段に取り付けた飾り板がグラグラしている。
 木村衣有子さんが新しい御著書の納品に来てくださっていて、ジュンク堂まで一緒に歩く途中、びっくりしたんだけどあれなに?と焼き鳥母家さんのビルの壁に大きな電光スクリーンが張り付いているのを教えてくださった。明治通りに面して壁画が描かれていた壁がぴかぴかな巨大広告モニターに変わっていてとても驚いた。
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 税理士の山田くんが繁忙期の3月になってしまう前に、とYBA(山田ビリヤードアカデミー)。4対10の敗け。絶対に決めるべき難易度が高くもないシュートをどうして外すのか、愕然とする。地軸がずれている。通算57勝113敗。硯家さんにて反省会。競馬の面白さを聞く。

2月28日水曜日。
 休み。
 雑司が谷のスーパー、オレンジマート前の100円ショップキャンドゥが店内を空になさっている。とてもお世話になっているので改装だけであってほしい。
 夕方、神田文房堂へムトさんが額縁を誂えに行くのに付いていき、帰路江戸川橋辺りを散歩。

 夜、映画「イコライザー3 THE FINAL」を観る。シリーズ中最もシャープだと思った。

2月29日木曜日。
 開店して諸事。
 一昨日のバイオレンスな風で傷んでしまった特価本スタンドの飾り板を修理。
 修理気分のついでになんとなく億劫で敬遠したままだった、20年使っている屋外オーニングテントの経年劣化の亀裂を修理。買っておいたテント布補修用のテープでテントの裂け目を塞ぐ。脚立に乗ることの恐怖感が年々大きくなっている自分の経年劣化は塞げない。
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 夜、『名画座かんぺ』最新号の表紙作り。案ひねり出しの壺が、ごまかしの最後の一滴すらなくからからに乾いていて逆さにして振り回してもなにも出てこない。新作は無理と諦め、過去3作のデータを透明度を変えて重ね合わせ調合する。これは言ってみれば、vo.102とvo.110とvol.120のリミックス。まるで新作に見える。今後も使える忍法を見つけた。

 夜、ホラー映画「X エックス」を観る。

3月1日金曜日。
 開店して諸事。
 たまにある、お知り合いが重ねて多く来てくださる日。ぽつぽつとお持ち込み買い取りの小山をミックスして商品化など。
 美術や文学に魅かれている看護学校生のMさんが来てくださり、埴谷雄高『死霊』をお探しだったがあいにく在庫がなかった。少しお話しして帰り際、そういえば何歳?と尋ねると2004年生まれ、今年二十歳になる、とのことで驚いた。2004年は古書往来座が開業した年で、彼と同い年。なんと、人が生まれてからハタチになる期間なのか、と驚いていたら、5年ぶりに来ましたけど変わらないですね、と、1995年から営業していた前店舗にも通ってくださっていた懐かしいお客様がお会計のために番台にいらっしゃった。

 閉店後、いつも通りの帳場での井戸端会議にふと参加なさったご近所のSさんが持参してくださった瓶に入った透明な酒、スピリッツというのだろうか、をいただいて飲みすぎ、記憶が霧散する。ムトさんにひたすら怒られたという印象は残っている。胸のうちで「コントロール」キー+「Z」キーの「作業を元に戻す」操作を繰り返し、繰り返し。

3月2日土曜日。
 開店して諸事。透明な洋酒の心身への残り方が普段の缶ビールの気持ち悪さとは全く違い、ふわっと浮いて漂うような新感覚で余計に怖い。

 ふわっと時は過ぎていき夕方、買い取りご常連の極ご近所のお客様宅へ出張お預かりへ。お客様から、ヴィム・ヴェンダース監督の新作映画「パーフェクト・デイズ」の影響で新潮文庫版フォークナー『野生の棕櫚』がamazonでいたずらに高額化している、とお聞きする。

 『名画座かんぺ』最新号の折り、83枚。

3月3日日曜日。
 開店して諸事。晴れている週末なのでお持ち込み買い取りとその処理作業が多め。

 店の営業20周年記念に欲しいものは、と友人が尋ねてくれて非常に悩む。そもそもぼくは「周年」が、時という獰猛な大河が流れただけ、としか感じられず苦手なのだが、祝ってくださるというかたがたを拒むこともおおいに間違いだと感じていて、さてそれでは具体的になにが欲しいのか。とりあえず「車」が思いついた。ルノー・カングー、日産ラシーン、真っ赤なジャガーXJ。しかしどの車種もたくさんの本を運ぶ仕事には不向きそうで、まずは車種探しから始めねばなるまい。手頃なところでは工具、AC式の赤いグラインダーが欲しいと以前から思っている。もしくは赤い折りたたみコンテナ。いや、さらに友人と話していて欲しいものがわかった。しっかりした管理会社と契約しているビル一棟。うるさくなく閑静すぎない商業も成立する立地でエレベーター有り、1階が古本屋、2階が友人が運営する喫茶店、さらに上階は友人知人も住める住居(ペット可)、屋上に農業ができる畑、池。地下1階はビリヤード場にするか音楽スタジオにするか。

 『名画座かんぺ』最新号の折り188枚。配布してくださる地への発送26件。
 昨日お預かりしたオリコン3つ分の海外文芸系中山を査定、仕分け。

 現在抱えている問題、水道「Water」、エアコン「Airconditioner」、シャッター「Shatter」を統一して「WAS問題」と名付けることによって、粘ついて晴れないもやもやした不安から極ほんの少し開放された気がする。閉店後、今日の最重要事案だった「A」についての書類を作る。

# by ouraiza | 2024-02-27 14:23 | Comments(0)
蜆    せと
2月19日月曜日。
 集中した商品化作業をしたくて定休日の無約束営業をする。小雨が降り静か。
 先月から準備をし楽しみだった市場の本番で、何度も古書組合の市場売買サイトをチェックし、一喜一憂。
 商品化に手間のかかる同一著者セットを時間をかけて作る。

 ふと思いついた工作をする。以前本の画像を撮影するためのライトを帳場の横に取り付けたが、実質的にほとんど使うことがなかったので、もっと有効だろうと思われる場所に移動。従来のアームライトを支えるクランプを本棚の天板に付けるとその天板が使い辛くなってしまうので、クランプの代わりになるアタッチメントを作り本棚に固定。
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2月20日火曜日。
 休み。
 東京での大市にいらっしゃっている沖縄のBOOKSじのんさんが予定変更があってぽっかり時間ができたのでどこかで飲み語らおうと誘ってくださり神保町にて遊ぶ。焼き鳥、カラオケ、中華。ビールをどうせおかわりするのだから先におかわり分も頼んでおくシステムで飲んでいるうちにいつしか約50歳のぼくと約60歳のじのんさんが抱き合っていたりする。じのんさんはとってもカラオケが上手でその美声と歌心に痺れているうちに意識が霧に包まれ、その後中華料理屋さんで卓上にこぼしてしまったキュウリをじのんさんがボリボリと食べていたり皆とにかくご機嫌だったと後に同行のムトさんから聞く。「あたし褒められて伸びるタイプ♡」というじのんさんを思いつく限りに称揚していたことは記憶にある。
 その日の手帳にはじのんさんの恩師のお名前と、「新しい古本屋さんが企画したZINEパーティーをジンを飲みまくる宴会だと勘違いして若い人は豪気なことをするもんだと思った」という挿話を書き留めておこうとした形跡が残っている。

2月21日水曜日。
 二日酔いで世界が回り立っていられず、夕方まで瞑目。非番の日でよかった。
 夜、プレステ2で「GOD OF WAR 2」をプレイ。
 『ちくま日本文学全集 梅崎春生』から「蜆」を読む。
”蜆が鳴くことをお前は知っているか。俺は知らなかった。俺は驚いた。リュックの中で何千という蜆が押合いへし合いしながら、そして幽かにプチプチと啼いていたのだよ。耳をリュックに近づけ、俺はその啼声にじっと聞入っていた。それは淋しい声だった。気も滅入るような陰気な音だった。”

2月22日木曜日。
 開店して諸事。なにかと諸事が多く緊張と弛緩を繰り返す。
 電話を数本かけ、日程予約を数個。
 天気予報では雨が夕方前に止むと報じられており、一旦止んだので安心して外の棚を全面展開したがすぐにまた降り出したのでまた閉鎖。行ったり来たりに疲弊。
 来年版『名画座手帳』に関する最初の会議。とても面白くまた飲みすぎる。

2月23日金曜日。
 開店して諸事。
 商品化の直前段階にある番台上の山の掘削をここ数週間進めてきたので、ひとまず何も無いまっさらな状態にして気分を一新しようと画策するも手が働かず、最も商品化に手間のかかる中山の頂上を数センチ削るのみに終わる。
 今日も昨日同様、雨が止みそうで止まない惑いの空。寒い。

 夕方、友人宅へ遊びに行く。誕生日の友人の娘Tちゃんになにを贈ったらよいものか悩み、手塚治虫『ゴッドファーザーの息子(「紙の砦」同時収録)』と『ブラック・ジャック』冒頭数巻にする。ジュンク堂書店がとても混んでいて驚く。こんなに賑やかな書店内の場面を見たことがあっただろうかと思う。
 「子」を女性の名前に使わなかった時代。友人のガンマGTPへの心配を肴にまた缶ビールを飲み過ぎる。ケーキ。浸かりすぎて塩が浮いている究極的にしょっぱい梅干しの焼酎割りの美味しさ。赤い木瓜の花。
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2月24日土曜日。
 開店して諸事。数日ぶりに晴れる。どうにも番台上の山の商品化を進めることに集中できずにまた午後を消失。
 夕方、先週の仕入れで車に積んだ荷物を降ろす。約4年分の月刊誌の同じ号がそれぞれ2、30冊ぐらいずつあり、商品としてどう構成するか悩みつつ市場用に縛って準備。

 友人のガンマGTPへの対処として、そうだシジミだ!と思いつき、ぼくもしょっちゅうお世話になっている「1杯でしじみ70個分のちから」カップを数個買って発送。

 夜、「GOD OF WAR 2」をプレイ。

2月25日日曜日。
 散漫ではない雨。ガードシフトで開店して諸事。松下竜一35冊一括のデータ作り、溜まった外用特価本の値段つけなど。

 夕方から実家にて”実家片付けねばならぬ隊”の活動。ひとまずの探索目標だった父親の小品原型を埼玉の鋳物屋さんが保存してくださっていると母親が電話で突き止めたことで今日の活動は終わり。しかしほんの僅かでもいいから実家から物を減らそう、と、使途不明な電熱器かもしれない器具を持ち出す。抽象画ばかり描いてきた母は最近、学生時代以来約50年ぶりに具象画に取り組んでいて、とても楽しいとのこと。

 夜、プレステ2の「GOD OF WAR 2」をやっとクリア。ギリシア神話が基になっているストーリーがさっぱり理解できないままだったが、操作性の良さと難所解決難度のちょうど良さに引っ張られた。クリアしたことでさらにボーナスステージがプレイ可能になってプレステ3への移行は延期された。

# by ouraiza | 2024-02-26 03:06 | 工作 | Comments(0)
中    せと
2月12日月曜日。
 ムトさんズと往来座編集室ズで集い、王子の友人Kさん宅で料理をして食べる会。まず王子駅そばの今後再開発されるらしい複合施設「王子サンスクエア」内のスーパーマーケットなどで食材調達。<王子駅周辺の再開発/https://newswitch.jp/p/38332>。編集部Aさんにメインシェフになってもらいつつ、午後からずっと缶ビールを飲み食事をする。遠足前の小学生のように(とキーボードを叩いてみたがそういえば小学生のころ遠足が楽しみだったかというとそうでもないかもしれない、ということは想像上のそれ以上に)この日がとても楽しみで、最近の業務を無事に終わらせる糧にしていた。Kさんのお住まいの新築マンションの設備や構造を拝見して社会見学をするなど。額縁を飾るお手伝いをほんの少しし、陽光がそそぐ健やかな空間で気を使う必要のない人々とゆっくりダベる。なんて日だろうか。
 美味しかったことを伝説として胸に刻み込んでいる編集部Aさんによる「イカスミのリゾット」をついに再び食べられる日が来た。やはり格別に美味しかった。
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 「Aさんのイカスミリゾット」を初めて食べたのがいつだったのか、ついに該当日が判明し、そうかそうだった、と驚いた。ある催事がありその会場でAさんが料理をしてくださったのが2008年6月8日日曜日。世に言う「秋葉原通り魔事件」が起こった日だった。

 深夜、プレステ2で「GOD OF WAR2」をプレイ。主人公がイカロスさんから翼を奪って翔ぶことができるようになった。2007年発売のゲームだが、初代ファミコン世代のゲーム観からするとグラフィックや操作性などがとんでもなく凄い。まさか羽ばたいてジャンプの飛距離を伸ばすとは。

2月13日火曜日。
 休み。家窟にて無為の修行。
 「GOD OF WAR 2」を遊び、『おかえり横道世之介』を読み終える。1993年春から1994年の春、池袋の北西。1994年の4月で物語は一旦閉じる。その年末までにアイルトン・セナの事故、オウム真理教松本サリン事件があり、翌年初めに池袋西口に古本大學芸術劇場店が開業した。

 夜、ドラマ「不適切にもほどがある」を観る。とても面白く、アーカイブが本放送に追いついてしまうと次回まで待つのがじれったいので全話終了後にまとめて観ようと決める。ツイッター(現X)界的な満員電車の煮凝りのような反応が世間から出そうなのをミュージカル表現で軽快に避けている気がして楽しい。

2月14日水曜日。
 午後から店で市場の準備。普段多くは触らないジャンルなので新鮮。天気が良くて春めき、絶好の屋外作業日和。政治経済歴史の堅いところ折りたたみコンテナ11個分の小口のイタミチェックをしながら仕分け、縛り。内村鑑三全集は平成の新再版だと猛烈に思い込んでいたがばっちり昭和旧版でびっくりした。市場に向けたナイス準備ができた。

 夜、プレステ2「GOD OF WAR 2」をプレイ。

2月15日木曜日。
 開店して諸事。先日買い取り時に注意事項を伝えたご常連のお客様からの被害妄想分裂呪文告発怪文書入りの封筒を、店員ノムが出勤時シャッターに挟まっていたのを拾い、あわあわしている。そのお客様に対して店として平坦に長くお付き合いするつもりだったのでなんだか余計に残念で悲しい。こういうことが5年に1度くらいはある気がする。
 
 猛烈な風が吹く。飾っていた料理本のカバーだけどこかに飛んでいってしまったりする。夕方前からは外の本を各棚の隅に集めて寄せ固めの型でしのぐ。

 古書組合のいつもより規模が大きな市への出品物を経営員さんが集荷に来てトラックに積んでいってくださった。エフをつけておらずお手間を取らせてしまったが、経営員さんのエフの付け方が熟練の技で美しく、今後の課題にしようと思う。本の束がどの商品の一部なのかを識別するエフ(荷札のようなもの)

 ふわふわと落ち着かない流れが続いてさて今日の業務に身を入れようとするころにはもう夜、閉店時間はすぐそこ。
 閉店後、最近の最重要懸案事項だったお手紙を書き終えることができてよかった。

2月16日金曜日。
 開店して諸事。昨日よりは弱いがしっかり主張してくる風。
 番台上の数個の中山をミックスしてじりじりと値段つけ。
 時が時を演じているかのように過ぎる。

 夜、プレステ2「GOD OF WAR 2」をプレイ。

2月17日土曜日。
 開店して諸事。もんやりとした暖かさ。

 店員ノムが体調を崩し帳場の横に布類を敷いて倒れている。急に暖かくなった最近のとりとめのない寒暖差による神経バランスや花粉症の影響もあるのかもしれない。一昨日にお客様からの怪文書で空気の圧が重くなり、よりによって昨日店員ノムは深夜に「砂の器」と「天国と地獄」という大作を続けて鑑賞したらしい。中毒の「中」、なにか鈍重な気配の連続に、中(あた)ったのだと思われた。
 ほうほうの体で自己診断し検索して「『救心』てやつがよさそう‥‥」とノムが言うのでツルハドラッグに買いに行く。その容器と丸薬がシルバニアファミリーのようなかわいいミニチュアぶりでとても驚いた。
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 とにかく店を出れないので極ご近所のお客様と極々ご近所のお客様の御蔵書整理のお手伝い、下見を数日延期させていただく。

 早めに店を閉め、最近の手数の不足を補うためひたすら値段付けの残業をする。
 ムトさんが経堂のゆうらん古書店さんで買ってきたH.N.Werkmanの画集『H.N.Werkman』を見せてもらったがとても素敵だった。画像検索結果

2月18日日曜日。
 開店して諸事。
 お持ち込み買い取りの小山と番台上中山への値段つけを諸事を挟みつつ断続的に。

 古本屋という商店が少なくなりめずらしい業種になったせいもあるのだろうが、週末は特に、良い意味でもない店の観光地化の進行を意識する。継続的に配架できるお土産商品はないものだろうかとかんがえてみたり。
 ウェブでの販売やカード決済の比重が増え、レジに残る現金の少なさにびっくりすることが増えた。
 
 閉店後、松屋にてシュクメルリ鍋というものを食べる。ミルキーにんにく鶏鍋。おいしかった。
  


# by ouraiza | 2024-02-19 02:02 | Comments(0)
時の間    せと
2月5日月曜日。
 定休日。
 曇り空がめずらしく天気予報の宣告通りにちょうど昼から雨になり、極ご近所様の書庫の整理に出かける道中に雪に変わった。運搬は濡れる危惧がありできないのだが、作業をしやすくするための場作りと選別、方向付けに従ったまとめ作業まではできる。極狭小で極寒。途中休憩の際コンビニで調達した靴に入れるホッカイロでとても助かった。少しの選別作業を残してある程度のところで目処をつけて終了。徒歩での帰り道では積もった雪を踏んで歩いた。とにかく温かいものを、とうどんの硯家さんにて軽打ち上げをし、ぼくは店に戻って小山の値段つけなど明日への引き継ぎ作業をする。
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 0時前に帰宅したが、地下の漏水のためにここ半年ほど毎日開閉している水道の元栓を店を出る際に閉め忘れたことに気付き、ぬかるんだ雪道をまた店に戻る。なんだか動きたくなりついでに店前とバス停とおとなりのローソン100さんまでの道程の雪掻きをする。数年に1度しかやらない呑気さからだろう、雪掻きは大きなヘラで絵の具をすくって思い切りぶちまけるような、ためらいの必要がない落書きのような爽快感があって楽しいといつも思う。
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2月6日火曜日。
 休み。昨晩の様子から残雪が道を酷い状態にしていると危惧していたが、驚いたことに雪はほとんどが溶けて無くなっていた。
 夕方前から先月体調の都合で延期になったYBA(山田ビリヤードアカデミー)。山田くんの調子もぼくの調子も下の中で、低空飛行のジタバタの仕合いの果て、2対10で完敗。二人で首をひねる。焼き鳥まさ樹さんにて反省会。ビルの火災の件、山田くんのガンマGTP値、などが肴となる。手帳には「サンディエゴ ラ・メッサ スプリングバレー エルカホーン ウィラメット」と英語が達者なまさ樹さんと山田くんそれぞれの留学先についてのメモが残った。

2月7日水曜日。
 休み。二日酔いに痺れながら急に気になって『火垂るの墓』とひめゆり学徒隊について調べる。沖縄師範学校女子部と沖縄県立第一高等女学校のあった場所が那覇市安里、スパーマーケットのりうぼうのある栄町市場だと初めて知った。何度か那覇に行ったとき、たいてい毎回周辺を歩いていた場所。
 
 以前から時が経過するということの不思議に捉われて茫然とするのだが、時間の経過を速く感じるか遅く感じるか、その違いはどこにあるのか。楽しい時は速く、楽しくない時は遅い、と単純に判断しがちだが、楽しい時に遅かったり、楽しくない時に速かったりもするではないか。

 夕方から有志に便乗させてもらいライブハウス渋谷WWWにて北里彰久さんのライブを観る。新鮮な空間で創造物のエネルギーに触れることができてとても楽しい。曲調のジャンル名を自分なりにかんがえてみようとして「そうか、シティ・シャンソン・ポップだ!」と閃き、近所の中華料理屋兆楽さんでの軽打ち上げの際披瀝したが、友人牛さんが「シャンソンじゃなくてボサノバ」と言っていて、まったくその通りだと思った。

2月8日木曜日。
 開店して諸事。
 業務用エアコン交換について、作業費の見積もりはくださったが機械本体の金額を直接尋ねる段取りのビックカメラさんへ緊張する必要もないのにやっと緊張を突破して電話をする。ビックカメラのお兄さんが細かな数字を教えてくださるのだが手元にメモ用紙を用意しておらず、「えーと紙、紙、紙が無いのでちょっと待ってくださいねメモしますから、あ、いやあの、探してるのは紙であって髪の毛が無い、って言ってるわけじゃないんですよ髪の毛も無いですけどね、ほらメモを書くほうの紙‥‥」とぺちゃくちゃ喋っていたら受話器の向こうのビックカメラのお兄さんが大爆笑をしてくれて、今日やるべき仕事が大成功に終わった気分になる。

 最近ほんとに続く現象なのだが、緊張してかけた電話の相手が出てくれた瞬間に別の伝えたい用件があった人が目の前に立つ、や、お客様宅のインターホンを押して先方が応答してくださった瞬間にポケットの中で電話がなる、など、いったいこのタイミング集約システムはなんなのだろう。

 至近の豊島区立中央図書館にて土曜日に迫ったYouTubeライブ放送での担当コーナー「b-Spo」の準備のための資料を探す。

 お客様のLさんが、「うん大丈夫大丈夫。」というセリフを「うん大丈夫大女優。」と言い換えていらっしゃり胸に刺さる。
 手帳編集部のIさんは、北海道旅行に備えてユニクロで「ヒートテック」を買ったつもりだったが帰宅後に包みを開いたら「エアリズム」だった、とのこと。
 夜、帳場端会議の際ご近所のSさんが、「こっちを振り返らないとわかってる人を見送るのが結構好き♡」と仰っていた。
 休日明け、家の洞窟から出て店にいて、世界には断片があふれている、と改めて奇妙に強く感じる1日だった。

2月9日金曜日。
 開店して諸事。
 黒井千次、立松和平、楊逸、笙野頼子、村上一郎など、それぞれの著書がまとまって入荷した一括して販売したほうがいいのではと思われる一群の調査、方向付け。まとまりでわかりやすい区分ができるようなら一括するほうが楽しい。

 b-Spoで使う資料をもっと探さねばならずやや遠方の池袋図書館に行く。吉田修一『おかえり横道世之介』で主人公横道世之介が住んでいる「ライジング池袋」がこの辺なのでは、と思われる周辺をなんとなく通過して、赤札堂の位置などを確認。

 閉店までb-Spoの小道具作り。やや不安ではあるが、今年からb-Spoをもっと気楽にかんがえこまずに軽く実施しよう、と思っているので、前段階から成否は問わないことにした。

2月10日土曜日。
 開店して諸事。
 ご高齢のお客様が紙袋二つ分の海外ミステリーの文庫を買い取りでお持ち込みくださり、中に「なんとか(失念)賞」と書かれたリストが入っており、そのお客様は一途に海外推理小説の複数ある賞の受賞作を探し回っている、とのことだった。「やっぱり受賞作って面白いんですか?」とお訊きすると、「うん昔のは面白いね。でも最近の新しいのは朝起きてコーヒーを飲むまでに4ページかかって、その分本が分厚くなって値段も高くなってくばっかりなのよ」と仰っていた。

 b-Spoの準備をずっと。
 閉店後、YouTubeライブ「不忍ブックストリームⅡ」の本番。b-Spoは、ある植物の花ことばを推量して正解との印象の遠近を競技進行側が主観的に採点する「ふらわーぽえむ杯」。初の採点方式を試みたが、とても楽しかった。ゲスト、根津・緑の本棚さんの良好無事な御移転を祈りつつ。植物と本、というお店の構成は、まったくもってできる人が限られる貴重で素敵な試みだと思う。
 b-Spoは1:17:15くらいからです。
2月11日日曜日。
 開店して諸事。
 午後遅めから出張買い取りグッズの準備をして、工事中なのでお庭に車を停められない極ご近所様へ台車を押して行く。書庫から店と市場で売れそうなものを選別、方向付けに従ってまとめる。手伝ってくれたムトさんが書庫最深部の紙が劣化して土になりかかっている部分から少しでも何かを救い出そうと探索中にオワッと叫び声をあげ、「ここはなにかの巣だ!」と言ったりする。前回は雪だったが今日は冬なりの陽が差して作業中はコートを脱いだ。オリコン16個と小ぶりなダンボール箱約30個。お仕事を終えた工事車両が無くなった18時過ぎに車を持ってきて積み込み。工事現場の土の地面にタイヤが埋まってしまいそうで怖く、少し手前のアスファルトの地面に停める。
 すぐに商品化へのチェックが必要なオリコン11個を店におろして車を戻し、缶ビール。

 夜、プレステ2「GOD OF WAR2」で遊ぶ。

# by ouraiza | 2024-02-12 01:32 | Comments(0)